②【南鳥島レアアース×核のごみ処分場】3重4重に効いた国家戦略を読み解く

(カテゴリ: 日本)

借金大好きhamasakiです。

前回、南鳥島のレアアース採掘と核のごみ最終処分場の同時進行が、3重4重のレバレッジを持つ賢い戦略だという話をしました。

今回は逆側から正直に見ていきます。


問題① 採掘コストが「20倍」という現実

毎日新聞の試算によると、南鳥島産レアアースは採掘・輸送・精錬のトータルで1トン当たり約7万ドル。現在の中国産価格の約20倍です。

「でも安全保障のためなら高くても買う」という議論はわかります。でもコスト20倍ですよ。

日本の製造業がそのレアアースを使って作った製品は、国際競争力を失います。補助金で穴埋めするにも限度がある。

第一生命経済研究所の分析では、日量数千トン規模の採掘を実現してようやく中国に近い水準にコストが下がると言われています。現在の試験採掘で使っている探査船「ちきゅう」は世界最高水準の技術船ですが、商業規模での大量揚鉱システムはまだ存在しません。 世界で前例がない話です。

問題② 精錬はどうするのか

これが致命的な課題だと思います。

中国は現在、世界のレアアース精製量の実に91.7%を担っています。

原料を採れたとしても、精錬するプラントがなければ使えない。精錬プラントを日本国内に新設するには、膨大な初期投資と技術蓄積が必要です。しかも精錬プロセスは大量の酸を使い、廃液処理が難しい。環境規制の厳しい日本でこれをやるのは、コスト面でも政治面でも相当ハードルが高い。

「採れた!」と「使える!」の間には、実は巨大な壁があるわけです

問題③ 最終処分場に南鳥島は「広さが足りない」かもしれない

南鳥島の面積は約1.51平方キロメートル。 高レベル放射性廃棄物の最終処分場に必要な地上施設の目安は1〜2平方キロメートル

……ほぼ島全体をつかっても足りるかどうかギリギリです。

最終処分は地下数百メートルに埋設するため、地下構造の適合性(断層・地下水・熱水活動など)の確認が文献調査の目的ですが、そもそも地上施設が収まるのかという問題が残ります。しかも採掘関連のインフラも同じ島に整備するとなれば、用途が衝突します。

問題④ 核のごみの輸送リスク

本土から2,000km、高レベル放射性廃棄物を船で運ぶ。

「科学的特性マップ」では南鳥島は「輸送面でも好ましい」と評価されましたが、これは輸送経路の地理的条件の話であって、輸送コストや事故リスクは別の話です。台風の多い太平洋上での船舶輸送、万一の漏洩時の影響範囲。容易ではありません。

問題⑤ 海底汚染への割り切りが必要

レアアース泥を揚鉱する際、海底の泥が大量に舞い上がります(プルームといいます)。深海生態系への影響は未知数で、国際的な深海採掘の議論でも最大の環境課題のひとつとされています。「どこまで割り切るか」は科学の問題ではなく、政治と社会の問題です。


まとめると、コスト・技術・面積・輸送・環境の5つが、それぞれ独立した高いハードルとして存在しています。

どれかひとつが解決されれば突破口になる、という話ではなく、全部が同時に進まないと機能しない話になっている。

これが絵空事と現実の差です。

果たして本当に実現できるのか。

官僚の絵空事ではなく、実際に責任者を決めて動かしていく胆力が今の政治家と官僚にあるのか。

そこが肝になります。

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