5月16日締め切りの発電者課金に意見するパブリックコメントを書くための理論武装

原発、火力、水力、再エネなどの発電所を持つ発電事業者に「送配電網の維持管理コストの一部を負担させる案」がいよいよ実現しそうな問題です。

 

本当は今回の記事でパブリックコメント案を書こうと思っていましたが、その前に「パブコメを書くための理論武装」という記事にして自分の頭のなかを整理しようと思います。

 

2020年以降 送電網使用料金である託送料金が再エネ事業者にも押し寄せる問題正式に勃発

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求められている意見の内容

まずこのパブコメは

太陽光発電ムラ市場

電力・ガス取引監視等委員会 送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキング・グループ「中間とりまとめ(案)」に対する意見募集について

という題名です。

そしてそのテーマは資料を読むと

①送配電設備を利用する者の受益や送配電関連費用に与える影響に応じた公平、適切な費用負担の実現

②一般送配電事業者だけでなく、送配電設備の利用者である発電側・需要側両方に対して合理的なインセンティブが働く制度設計

にあることがわかります。

議論をぶつけるポイントはこの2点です。

①送配電設備を利用する者の受益や送配電関連費用に与える影響に応じた公平、適切な費用負担の実現

このポイントでいうと

・受益とは何か   → どうあるべきか

・公平とは何か   → どうあるべきか

・適切な費用負担とは何か → どうあるべきか

ここが頭をひねるポイントです。

 

ここの理論武装は京都大学の安田先生の著書
送電線は行列のできるガラガラのそば屋さん? (NextPublishing)

スクリーンショット 2018-03-19 18.04.17

 

の2.3 送電線空き容量問題の根本原因はなにか? – その2:経済編

を読むと完璧に答えられます。

 

この章だけなら5分もあれば読めます。

キーワードは「受益者負担と原因者負担」「利益と便益」「新しい技術が市場参入できない不公平さ」です。

本全体も1時間で読めますのでパブコメを書く前に是非読むことをお勧めします。

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②一般送配電事業者だけでなく、送配電設備の利用者である発電側・需要側両方に対して合理的なインセンティブが働く制度設計

このポイントはどこにあるでしょうか?

そもそも論ですが、この観点自体がかなり筋悪です。

おそらく論者は「発電所を無計画に田舎に作るなんて送電網のコストが上がるだけじゃないか」と言いたいのではないでしょうか?

わからなくもありません。

 

しかし、この点で「発電側・需要側両方に対して合理的なインセンティブが働く」ことを期待するには「田舎に需要を作る」という方法が一番得策です。

再エネ含め発電所は国内のあらゆる場所に分散設置されている方がテロや送電網の事故の際有利です。

当然都会に原発を作る、都会にメガソーラーを作ると言うのも筋悪です。

 

さらに根本的な問題として「中間とりまとめ」にも出てきますが

また、送電ロスの削減は、電力に係る全体のコスト抑制につながる重要な取組であるが、電圧別等の送電ロスの詳細な発生状況や一般送配電事業者による高圧化等の送電ロス削減に向けた取組状況は公表されていない。

これらの課題に対応するには、送電ロスの発生状況等について、透明性を高めるとともに、一般送配電事業者が送電ロスの調達・補填を行う仕組みについて、検討を深めていくことが適当である。

今の現段階で「送電ロス削減に向けた取組状況は公表されていない。(中略)送電ロスの発生状況等について、透明性を高めるとともに(中略)検討を深めていくことが適当である。」と結んでいます。

 

つまり「わからない」のです。

 

となるともう感情論でしか議論ができません。

 

「遠いところに作っちゃダメでしょ」で終わってしまいます。

需要家でいうと「まだ東京で疲弊してるの?」という話ですが都民が田舎に引っ越すことは考えられませんしそれはそれで国力をそいでしまいます。

 

ではこの案が通った場合の再エネ事業者の負担額は?

大抵この手のパブリックコメントはアドバルーンで官僚側が上手にまとめた「中間とりまとめ案」を泳がせて反応を見て、落とし所に流し込む形になります。

しかも「神は細部に宿る」という芸術的な論理構造・文章構造になっていることが多くなかなか真の意図が見えづらいことがあります。

 

まずは素直に乗っかって低圧の1基の負担額を見てみましょう。

 

 送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討 ワーキング・グループ 中間とりまとめ(案)

 

の6pの下の方には

 

発電側による負担規模としては、全10社の託送原価の1割程度と想定される。kW当たりの単価としては、2015年の全10社費用をベースに簡易に試算すると、150円程度/kW・月が目安になると考えられるが

と記載されています。

素直に計算すると49.5kWではひと月あたり7,245円、年間では89,100円です。

すでに稼働している物件として特に事故等がなければ支払えない額ではないという微妙な金額。

しかし騙されてはいけません。これは完全な後出しジャンケン。

僕たち事業者は全てのリスクを背負ってやっています。僕個人ももうすぐ1億円の借金になります。

売上の大部分を融資の返済に充てている事業者としてはとても大切な真水のお金。

そこからこの金額が何の配慮もなく差っ引かれるというのはあってはならないことです。

社会の便益がある事業に対し融資を引き出し、適切な利益を得る。さらに公的費用に頼ることなく、民間事業なのでコストが急速に下がる。

再エネの導入・促進を電力会社に任せていたら5年間で半額にコストが下がるような状況には絶対になっていないでしょう。

そういう意味では売り手よし・買い手よし・世間よしの三方よしなのです。

 

一時期の中国の大気汚染などを見れば「火力発電が隠れて放出している外部コスト」がよくわかります。
*外部コスト 本来は費用負担が必要なのに費用化されていない「大気汚染対策」等のコスト

 

再エネ業者だけがこのコストを自腹で払わなければならないのは不公平すぎる

東京電力や東北電力などの小売事業者と異なり、再エネ事業者はこのコストを電気料金に一切上乗せすることができないのです。

他の全ての小売事業者は「販売価格に転嫁して電気料金に上乗せする」のに、再エネ事業者だけができないのです。

これの何処が「公平な費用負担」なのか。

ありえませんね。

 

ちなみに「送配電網を電気料金に上乗せできる電力会社」は

 

1:社員専用の飲食施設「東友クラブ」の維持管理費
2:接待用飲食施設「明石倶楽部」の維持管理費
3:熱海などに所在する保養所の維持管理費
4:女子サッカーチーム「マリーゼ」の運営費
5:東京電力管弦楽団の運営費
6:総合グラウンドの維持管理費と減価償却費
7:野球やバレーボールなど社内のサークル活動費
8:PR施設
9:1人当たり年間8万5千円の福利厚生の補助
10:健康保険料の70%負担
11:社員の自社株式購入奨励金(代金の10%)
12:年3.5%の財形貯蓄の利子
13:年8.5%のリフレッシュ財形貯蓄の利子
14:電力と関係の無い書籍の購入代金
15:業界団体・財団法人への拠出金と出向者の人件費
16:原発立地自治体への寄付金
17:オール電化PRの広告宣伝費
(東京新聞 12月20日付)

こんなコストを電気料金に転嫁していました。

原発事故がなければ今もこのコストは電気代に紛れていたはずです。

この他にも原発の電源立地費用や各自治体でばら撒いている寄付金・助成金・広告費は大量に発生しています。

これ本当に公平なんでしょうか?

 

その他の比較 神は細部に宿る

今回の負担ルールはkWベースで計算されているので火力(稼働率80%近辺)と比べると5.3倍ほど割高です。

ちなみに柏崎刈羽原発はと言うと1〜7号機の合計出力が820万kWなのでひと月あたり約12億3千万円になります。

 

稼働してない原発でこれだけのコストがかかるわけですからどう考えても原発は非効率!となると思うのですが、この辺が「神は細部に宿る」という文面で「1ヶ月間まったく稼働していない場合は割り引く」と言った文面がすでに「とりまとめ」に含まれています。

 

もちろん割り引いたあとでも十分高コストなので「このコストを埋めるためにも稼働させよう!」という圧力がかかってくるはずです。

 

ここまでまとめてようやく自分の頭もまとまってきました。

あとはワードでまとめた下書きを一気に書き上げるだけ。

 

 

 

 

明日、文面アップできるかなぁ・・・

 

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