過去2回「21年目以降」のことを「After FIT」として記事を書いてきました。
>>After FITの経営学 20年の事業終了後はどうすべきか
>>After FITの経営学2 売電単価から解放されるとどうなるか
今回はそこではなく、早ければ3年後には実現されそうな新規申し込みの段階のAfter FITを考えてみます。
固定価格買取制度はいつまであるのか?
40円から始まった固定価格買取制度。
この制度は再エネの大量導入を促すことでパネルなどの部材の大量生産を進め、「学習効果」を蓄積して行って結果的に新たな再エネ設備のコストを圧倒的に下げていくことを目的としています。
実際に発電所の設置コストは下がり続け、今年は18円ということでついに半額以下になりました。
来年はおそらく16円程度になるでしょう。
工場などが契約している割安な電気料金である「高圧動力」と呼ばれる電気料金が14円程度と言われていますから、再来年の価格はそれよりも安くなることになります。
こうなってくるといよいよ「再エネは放っておいても勝手に増えていく」という状態に突入していきます。
グリッドパリティの達成です。
グリッドパリティを突破すると再エネは勝手に増えていく
グリッドパリティというのは「電力会社から買うより、自分で再エネを作った方がやすい状態」です。
割高な電気料金である家庭用(28円前後)と比較するとすでに再エネはやすいのですが、一方で家庭用の太陽光はまだまだ高いので厳密にはこれはグリッドパリティとは言えません。
一方で、割安な電気料金である工場が契約している価格よりやすいのであればこれはグリッドパリティを突破したといってもいいはずです。
グリッドパリティを達成するとどうなるか
理屈の上ではパネルの設置コストが十分に下がれば固定価格全量買い取り制度は不要になります。
ところが固定価格買い取り制度がなくなると困ることがあります。
それは「融資が通らない」ことです。
少なくともサラリーマンが融資を引き出して低圧太陽光発電所を作る時代は終わります。
当たり前ですよね?
信用の低いサラリーマンが融資を得ていたのは全量買取制度があったからです。
市場価格で自由に売電して生計を立てる事業者をIPPといいます。(独立発電事業者)
IPPには当然ながら「電力価格の下落」という事業リスクがあります。
事業の安定性が一気に落ちるのです。
この事業で資金を獲得するには別の事業での信用や個人資産が必須に成ってくるはずです。
ではグリッドパリティ後も全量買い取り制度を続けるとどうなるか?
例えば7円とか6円とかの価格で固定された契約をするとします。
この価格帯は電力会社の原価である回避可能原価よりも下回る価格です。
理屈の上では国民が支払っている「電力賦課金」を低減させることも不可能ではありません。
この筋であれば国民負担を低減させつつ、融資を引き出しながら事業を継続することができます。
ただ、その頃には国内のエネルギー自給率はかなり再エネが占めていることになり、そもそも論で「全量買い取り」は難しくなっている可能性が高いです。
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