CO2排出削減のための再エネ導入

(カテゴリ: Hiroの世界再生可能エネルギー探訪)

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出典)総合資源エネルギー調査会 ⻑期エネルギー需給⾒通し⼩委員会(2015年4月28日、第8回会合)資料5「電源構成を変化させた場合の影響」http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/008/pdf/008_09.pdf

 

 

再エネ導入量増加のためのCO2排出削減

 

    今回はとても地味なのですが、日本の太陽光発電産業にとって非常に重要なテーマです。先日、経産省からエネルギーミックス案が示された後ですから、太陽光のシェアを広げるためにも特に重要です(エネルギー基本計画は約3年ごとにまとめられますので、国民的再エネ普及運動が広がればチャンスはあります)。そのエネルギーミックス案はかなり厳しいものです。⻑期エネルギー需給⾒通し⼩委員会に出された経産省案では、2030年の電源構成における再エネ比率は22~24%。この中には水力が8.8~9.2%含まれています。昨年5月末までに認定された太陽光発電設備が稼働するだけで20.5%に達するので、現在の設備認定量の半分程度で限界、これから新規認定を受ける発電所に関してはそもそも不要ということになりかねません。政府の一方的な案を受け入れ、太陽光を終わらせてもいいのでしょうか?

 


 

    先月28日の長期エネルギー需給見通し小委員会の配付資料5の4ページ(上の画像)にご注目いただきたい。政府が策定する2030年の国内電源構成において再エネ導入量とCO2排出削減量には相関関係があることが分かります。『CO2排出削減のための再エネ導入量増加 = 再エネ導入量増加のためのCO2排出削減』。つまり、今後も再エネを増やしていくためには、再エネがCO2排出量削減のための大きな役割を背負っていかなければなりません。そこで、2011年の東日本大震災以降の我が国の環境・エネルギー政策を、過去の経緯を含めておさらいしてみたい。

 

 

自民党政権「2013年比で26%」

 

    記憶に新しいところですが、2015年4月30日、地球温暖化対策に向けた日本の温室効果ガスの削減目標を巡り、政府は、2030年までの削減目標を「2013年比で26%」とする案を30日、国の審議会に示しました。温室効果ガス削減の新たな枠組みを巡っては、年末にパリで開かれる国連の会議・COP21での合意を目指して、30日の時点で35か国が国連に削減目標を提出しており、このうちEU(ヨーロッパ連合、28か国が加盟)は最低目標として2030年までに「1990年比で40%」削減するとしています。EUのこうした削減目標はかなり積極的に見えます。積極的といえば、ふと思い出すのが、”宇宙人”こと鳩山元首相が国連で宣言した目標、いわゆる鳩山イニシアチブです。ご記憶の方も多いかと思いますが、どんなものだったのでしょうか。

 

長期的に原発依存度を低減させていくとの方針は変わりません。あらゆる施策を総動員して、徹底した省エネルギーと、再生可能エネルギーの最大限の導入を進めてまいります。

首相官邸. "第189回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説." 平成27年2月12日.  http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement2/20150212siseihousin.html

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衆院本会議で施政方針演説をする安倍首相=2015年2月12日、衆院本会議場

出典)首相官邸ホームページ

 

 

EU「1990年比で40%」
鳩山イニシアチブ「1990年比で25%」

 

    2009年9月22日、米ニューヨークの国連本部で開かれた国連気候変動サミット開会式において、鳩山由紀夫首相は米中などの削減努力を前提に「1990年比で25%」という2020年までの日本の温室効果ガスの削減目標を国際的に公約しました。このとき日本国内では、鳩山首相のCO2の25%削減を国際公約に対して、財界・電力総連・自動車総連、さらにそれらに近い政党やメディアから「非現実的な国際公約である」として大きな批判が巻き起こりました。しかし、国連などを中心に国際社会からは鳩山イニシアチブに対する賞賛が寄せられました。まさに鳩山イニシアチブをめぐる「国際社会における賞賛」と「国内における批判」の様相を呈したのです。その一例として、イギリスの公共放送局BBCやフランスのAFP通信社が報じた海外機関や要人の反応を紹介したいと思います。

 

先進国に対し2020年までに25-40%のCO2排出量削減を推奨する国連の気候変動事務局長は日本を賞賛した。”そうした目標を掲げることで、日本は、先進工業国が合意した気候変動緩和におけるリーダとしての役割を担うことになるでしょう”とYvo de Boer 国連気候変動事務局長は会議で述べた。
BBC News “Japan vows big climate change cut.” September 7, 2009.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/8241016.stm

 

“国連外交デビューを飾った鳩山首相は、先の衆院選のマニフェストにも掲げた、日本の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年比で25%削減する意向を表明したほか、途上国支援の強化を打ち出し、先進国の中で特に目を引く結果となった。元米副大統領で環境保護活動家のアル・ゴア(Al Gore)氏は、鳩山首相の演説を「素晴らしい」と語った。
AFP=フランス通信社. ”気候変動サミット開幕、鳩山首相が温室ガス25%削減を明言.” 2009年09月23日. http://www.afpbb.com/articles/-/2644847

 

ちなみに、政権政党時代に外交・安全保障政策で混乱を招いた結果、何かと批判的な意見が多く、未だに毛嫌いされる方も多い民主党です。しかし、環境・エネルギー政策だけを見てみれば、再エネとりわけ太陽光発電業界にとって最も友好的な政党であったことは否定のしようがなく、その政策は、実現されたものを鑑みれば、むしろ歓迎すべきものばかりだったと思います。今も続く原発停止のきっかけを作ったのも民主党、40年廃炉ルールを定めたのも民主党、固定価格買取制度を導入したのも民主党でした(自民も政権交代前から制度導入を目指し党内で議論はしていた)。一方で、最も注意しなければならないのは自民党政権下の経産省なのではないでしょうか。福島であれほどの事故が起きた後でも、政官財(自民・官僚・経済三団体)と原子力ムラの癒着が解消されたと全く言えません。

 

これは、我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として、国内排出量取引制度や、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決意です。
首相官邸ホームページ. “国連気候変動首脳会合における鳩山総理大臣演説 ( ニューヨーク).” 平成21年9月22日. http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200909/ehat_0922.html

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国連気候変動サミットの開会式で演説する鳩山首相=2009年9月22日、米・ニューヨークの国連 

出典)首相官邸ホームページ

 

環境省がまとめた再生可能エネルギーの将来予測

 

    2015年4月3日、CO2排出量の削減を重視する環境省は三菱総合研究所への委託を通じて、2030年の再生可能エネルギーによる発電電力量の割合は最大35%まで拡大可能だとする試算結果を公表しました。経産省が有識者会議に示した案と違うのは、2030年以降ピークアウトしてゆく再エネによる電気料金を一切考慮していなかった点にとどまりません。環境省は、再生エネの拡大で買い取りに伴う国民負担額は、年間1兆7847億〜2兆5583億円に膨らむと推計。しかしその一方で、設備投資や工事などで年平均1兆1000億〜2兆3000億円の経済波及効果と、同9万3000〜18万7000人の雇用創出を見込んでいるのです。さらに、化石燃料の輸入が減ることで30年までに計15兆〜29兆円の資金の海外流出を防げると試算。二酸化炭素排出量も年間8606万〜1億7280万トン減り、1990年比で10%前後削減できると推計しています。

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こうして見ていきますと、再生可能エネルギーを普及させるためにもCO2排出量削減は必要ですし、CO2排出量を削減するためにも再生可能エネルギー普及は必要となります。いわばこれらは一枚のコインであり、表裏一体でなければならないということです。上述しましたが、2015末にパリで開かれるCOP21(国連気候変動枠組み条約締約国会議)での合意を目指し、すべての国が参加した上で京都議定書にかわる新たな枠組みを形成しようと国際社会は動いています。この新しい枠組みでは、各国が温室効果ガス削減などの自主目標案を事務局に登録することになっているそうですが、現在までに35国が提出した目標案は概ね30%から50%であることを考慮すると、日本の"25%程度"では見劣りしているように思えます。ちなみに「2013年比で2030年26%削減」とは、「1990年比18%減」になります。ちなみに日本は世界第5位の温室効果ガス排出国。

 

結論として、太陽光推進派がすべきことは『 CO2削減』と声を上げることです。
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