東芝が太陽光発電+水素製造+燃料電池のシステムをフィリピンの地方電化で試すようです(フィリピン、「再エネ+水素」で地方の電化率向上、東芝子会社と連携)。太陽光発電をいったん水素に変換してしまえば貯蔵もできるので、自立した電源供給が可能になります。無電化地域に使えるかもしれませんね。
私も2000年前後に途上国の太陽光地方電化にずいぶん従事したことがあります。あの頃は太陽光+バッテリーの小型分散システムが途上国地方電化に有効と思われ、日本だけでなく世界の多くの国が同じようなプロジェクトに取り組んでいました。しかし、結果から見るとどの国のプロジェクトも大して役には立ちませんでしたね。途上国はインフラや人々の体制が整っていないので、変なものを持ち込んでもうまくいきません。まして地方ではなおさらです。私が従事していた頃だと、この記事のシステムよりもっと簡単な太陽光+バッテリーのシステムでも地方で維持することはできませんでした。
今回のシステムはそこに水素を入れてさらに燃料電池です。地方電化の手段に使えるようなものではないでしょう。
ただ、こういうプロジェクトを否定するわけではありません。このプロジェクトは記事にもありますように、経産省の「質の高いエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業」に採択されたものです。この狙いは途上国の支援ではなく、日本の技術や事業の開発にあります。悪く言えば、相手国の地方電化に役立たなくても、日本側にノウハウが残ればよいわけです。途上国の未電化地域で展開する技術・事業ですから、相当厳しい環境にあるわけです。そこで展開する技術・事業のノウハウを得られたら、今後の海外展開する場合に大いに参考になると思われます。
むしろ、この事業はそういう目的のものと割り切って、無理に相手の地方電化を進めようなんて考えない方が良いでしょうね。途上国地方電化に十数年従事してきた身として、つくづくそう感じました。
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