サンヨーはパナソニックに吸収されて今はありませんが、現在パナソニックで販売されているHIT太陽電池はサンヨーが開発・実用化したものでした。パナソニックの使ったHITの説明図を下に示しますが、HITについては以前にこのブログで紹介しましたので、それも参考にしていただければと思います(パナソニックのHIT)。
HITの構造というのは普通ではちょっと考えられないもので、こういう構造をよく考えたものだと感心していましたが、どうもサンヨーでも別の実験目的で作ったセルが意外な特性を示したことからHITの開発につながったらしいです。なるほど・・・、それなら判る。
HITの特徴は結晶シリコンにアモルファスSi(シリコン)層を使うところにありますが、サンヨーはかつてアモルファスSi太陽電池の研究開発では世界をリードするほどの立場にあったので、その技術の蓄積がHITの開発にもつながったのだろうと思います。そのことを評価して私はパナソニックでなくサンヨーのHITと表現しました。
HITで使われているアモルファスSiについてですが、それだけでも太陽電池を作ることができます。しかし、そのためにはかなりの技術とノウハウが必要で、かつてはアモルファスSi太陽電池について盛んに開発競争が行われていました。HITでアモルファスSiは結晶Siとのハイブリッドとして使われ、電圧特性が大きく改善されているようです。サンヨーからHITの構造が発表された時、他の多くの組織で同じような構造の太陽電池を作ってみたようですが、なかなかサンヨーほどの電圧を出せなかったようです(単なる噂です)。
こういうことから、HITのような太陽電池を作るのは、ターンキー以上の努力が必要なのではと思うようになりました。特にアモルファスSiの製膜には材料特有の微妙なノウハウが必要なのではという気がしますので、前回紹介した逆ピラミッドと同様に単にコピーだけでは追いつけないものがあるかもしれないという思いで見ています。
結晶Si系だけでなく、新規技術の太陽電池が今後開発されてくる可能性も十分にありますが、要するに太陽電池や太陽光発電の世界が日本の技術力で勝負ができるものであって欲しいというのが私の願いです。
かつて「世界一」と言われた日本の太陽電池ですが、FITの導入で市場が乱開発され、わけのわからない状況になりました。太陽光発電の世界が、ビジネスとお金と制度の話ばかりになっているのには不本意な思いをしています。当分、このような状況は続くのかもしれませんが、日本のFITは一段落した感があります。ここで日本が落ち着いて技術開発に取り組み努力していけば、再び世界一に返り咲くことは可能ではないかと、半分期待も込めて見ています。
コメントを残す