さて、測定をより理解するためにメーカーとやり取りした結果を紹介します。知りたかったのは「ソラメンテ」と「ソコデス」で測定される抵抗値に大きな差があった理由です。測定したのは240Wのパネルが7直列のストリングで、「ソラメンテ」では22Ω、「ソコデス」では10Ω以下でした。
「ソラメンテ」は私が発電所の保守管理を委託している会社のものを使い、「ソコデス」は私が所属している太陽光発電ムラというグループのものを使ったので、問い合わせはそれぞれの組織を通じて行いました。
まず「ソラメンテ」の方のやり取りを紹介します。
やり取りはメールで行われたので、挨拶などの部分は省いてそのまま記載しましたので、長文になってしまいました。やや難解なのでやり取り紹介の部分は読み飛ばされても構いません。
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- 最初に私から次のような質問をしました。
ソラメンテでは対象ストリングの直列抵抗を測定しています。この直列抵抗というのはVoc近辺での微分抵抗値だと認識していますが、これは正しいでしょうか。
今回測定した発電所に使われているモジュールの直列抵抗はデーターからは1Ω弱と見られます。対象のストリングは7直なので全体で7Ω以下になると思われますが、測定値は20Ωから30Ωになっています。この違いはどこから生じるものでしょうか。
- これに対してメーカーから次のような回答が返ってきました。
SolamenteZで測定する抵抗値は、SolamenteZの赤いプローブから発した信号が黒いケーブルに戻ってきてどれだけ減衰したかによって計算されます。従いまして、IVカーブにおけるVoc付近の微分ではありません。
測定される抵抗値には、接続箱からパネルまでの配線長、配線の巻き、接触抵抗等、様々な要因が含まれます。ストリングによっては20~30Ω程度の差は出る可能性があります。
- やや意味不明な回答だったので、私から再び次のような問い合わせをしました。
抵抗値をソラメンテの赤いプローブから黒いプローブに流した信号の減衰で見られるということですが、赤いプローブは太陽電池のプラスに、黒いプローブはマイナスにつないでいるため、赤いプローブから黒いプローブに信号を流すためにはVoc以上の電圧を印加しなければなりません。この状況で信号の減衰を見ているとすれば、ほぼVoc付近での抵抗値を見ていると考えられますがいかがでしょうか。
今回の測定では別途、IVカーブトレーサーでストリングでも特性を測っています。測定はソラメンテを使った時と同じ端子から行っているので、全く同じ回路で行っています。しかしここで測定される抵抗値はソラメンテで測定される値より大幅に低い値となっています。配線や接触からの測定の差は考えられませんが、他にどのような原因が考えられるでしょうか。
ストリングによって20-30Ωの抵抗が出る可能性があるとのことですが、このストリングでは8アンペアほどの電流が流れます。20-30Ωも抵抗が生じるということは、動作時には200Vほどの電圧損が発生するということでしょうか。
- これに対しメーカーから次のような回答が来ました。私の質問を引用し、対応する形で答えているので分かりやすいと思います。
抵抗値をソラメンテの赤いプローブから黒いプローブに流した信号の減衰で見られるということですが、赤いプローブは太陽電池のプラスに、黒いプローブはマイナスにつないでいるため、赤いプローブから黒いプローブに信号を流すためにはVoc以上の電圧を印加しなければなりません。この状況で信号の減衰を見ているとすれば、ほぼVoc付近での抵抗値を見ていると考えられますがいかがでしょうか。
⇒ 当社のソラメンテZが測定する抵抗値は、単位が同じΩであるインピーダンスを測定しております。 つまり、太陽電池の発電である直流に対して、ほとんど影響を受けずにインピーダンスを測定することが可能です。 ご質問のVocのような高電圧は、不要です。
今回の測定では別途、IVカーブトレーサーでストリングでの特性を測っています。測定はソラメンテを使った時と同じ端子から行っているので、全く同じ回路で行っています。しかしここで測定される抵抗値はソラメンテで測定される値より大幅に低い値となっています。配線や接触からの測定の差は考えられませんが、他にどのような原因が考えられるでしょうか。
⇒ IVカーブトレーサのことは詳しく存じませんが、一般的には、発電素子(セル)のVoc近い電圧、つまり、抵抗がゼロ近くになるところで測定されていると思います。しかしながら、ソラメンテZの測定は、テスターと同様な低電圧で行います。たとえば、直流を低電圧で太陽電池に印加したばあい、直流抵抗は無限大、Voc付近の電圧で測定されれば、0付近です。インピーダンスは、セルの特性に応じた数値を示します。配線も直流抵抗とインピーダンスは違う値を示します。接触抵抗は、ほぼ同じとなります。
ストリングによって20-30Ωの抵抗が出る可能性があるとのことですが、このストリングでは8アンペアほどの電流が流れます。20-30Ωも抵抗が生じるということは、動作時には200Vほどの電圧損が発生するということでしょうか。
⇒ 太陽電池は、直流を発電します。従いまして、直流抵抗が低ければ、電圧降下は極小さいインピーダンスとは、同じに扱えません。しかしながら、インピーダンスが高すぎる(たとえば200Ω)の場合、インピーダンス値の直流抵抗成分が大きいのですから言われるような電圧降下が発生します。
- 難解な内容なので、私から次のように確認をしました。
察するにソラメンテの測定は交流で行っているため、その値を直流の動作にはあてはめることはできない。
ソラメンテの測定で得られた今回の値は、たまたま直流での値の数倍になった。
直流での値がどのようになるかは、ソラメンテの測定からは推定は難しい。
ということで良いでしょうか。
- 再びメーカーから私の質問を引用する形で、丁寧な回答が来ました。
察するにソラメンテの測定は交流で行っているため、その値を直流の動作にはあてはめることはできない。
⇒ はい、そうです。
具体的に説明いたします。
もし、クラスター断線しているソーラーパネルが存在する場合
IVカーブから算出される直列抵抗は、低い値を示します。(正常と判断されます)
なぜならば、電気は断線しているクラスターをバイパスして抵抗が低いところ流れる
ため、直列抵抗が上昇しません。
しかしながら、ソラメンテZで測定されるインピーダンスは、大きく増加するので、
断線を検出することができます。
これが、特長のひとつです。
ソラメンテの測定で得られた今回の値は、たまたま直流での値の数倍になった。
直流での値がどのようになるかは、ソラメンテの測定からは推定は難しい。
ということで良いでしょうか。
⇒ はい、そうです。
IVカーブから直列抵抗(Rs)が算出できることが正しいか正しくないかは、
まだ、結論がでていないと思います。正しくないと主張する方が、少ないですが。
たとえば、ケーブルや接続端子に不良な抵抗が発生すれば、IV-カーブから
算出されるRsも、ソラメンテが出すZ(インピーダンス)も、
ほぼ同じだけ、抵抗値(Ω)が上昇します。
しかしながら、他の不良原因がある場合は、両者(RsとZ)の比較が
困難になります。
—– やり取りの紹介はここまでです。ご苦労様でした。
先方の回答に対し、コメントを入れるのは差し控えておきます。
結局のところ、この問い合わせで判ったことは、ソラメンテで表示される抵抗値は不良かどうかを判断するためのものであって、その値を太陽光発電側の抵抗値として扱うことはできないということです。
ソラメンテは太陽光発電の動作解析をするものでなく、不良個所があるかどうかを判定するためのものなので、これでも十分でしょう。従って、表示される値を気にする必要はないのですが、今回の測定の結果からは、ソラメンテで表示する抵抗値は実際の5-6倍になっていることがわかりました。
とにかくコンパクトな機器で、良否判定が目的であれば、使いやすい機器だとは思います。
次回は「ソコデス」とのやり取りを紹介したいと思います。
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