キリバスの太陽光2

途上国でのソーラーホームシステムによる電化はバッテリー交換がネックとなって持続困難になりやすいものですが、なぜかキリバスではうまく行った、ということを前回紹介しました。

SHSソーラーホームシステム

バッテリー交換の問題は日本側も良くわかっていて、プロジェクトでは単にソーラーホームシステムを設置するだけでなく、保守サービスをする組織を現地に確保して、彼らが毎月巡回サービスするように教育していました。ユーザーは巡回サービスの料金として毎月500円ほど支払います。ただ、実際にはトラブルはほとんどなく、巡回サービスは実質的には料金徴収をするためのもののようでした。

毎月500円集めたら1年で6000円になり、巡回のための交通費・人件費や稀にあるトラブル対応のためのコストを差し引いても、2-3年後にバッテリーを交換する費用が確保できる計算です。キリバスでこれがうまく機能していたということになります。

しかし、このような取り組みをしていたのはキリバスだけではありませんでした。

他の多くの国でも同じような取り組みをしていましたが、ほとんどがうまく行っていません。その理由には次のようなものが挙げられます。

  • 予想以上に保守の交通費や人件費がかかりサービスを維持できなかった
  • 部品不足などのためトラブルに即応できなく、ユーザーが不満を持って料金を支払わなくなった。

月500円の支払いというのは途上国の人にとって想像以上に大きな負担で、何か理由を見つけてでも支払いを逃れようとします。一人でも料金を払わないユーザーがいると、他の人も不公平だと言って支払わなくなってしまいます。

一方、保守をする側の会社では保守以外に仕事を見つけられないと、保守人員を遊ばせることになり人件費がかさみます。彼らはコスト意識が低く、人員が遊んでいて赤字になっても危機意識がなく、事業破たんへの道を進んでいきます。

日本人なら簡単に思うことも、このような国では持続できないことが多くあります。

キリバスで本当にうまく事業が運営されているのか不思議に思い、彼らの経理資料を見せてもらいました。資料はきちんとは整理されていませんでしたが、それなりに状況が分かる状況でした。それを見るとやはり保守事業は赤字でした。しかし、保守以外に太陽光発電の販売や設置の仕事がそれなりにあり、その黒字で保守の赤字を補って全体として何とか運営しているというのが実情でした。ちなみにこの会社は太陽光発電だけの会社です。

まぁ、何とかうまくやり繰りしてユーザーへの保守サービスを継続してくれているのだな、と感心したものでした。

私がこの現地調査を行った時は、確かキリバスが40周年か50周年の時でした。調査中に独立記念日があり、現地で盛大な記念式典がありました。キリバスのような小さな国では、我々のような人間でも結構上位の客であったのか、私や保守サービスをする会社の社長などが記念パーティに招待されることになりました。

記念パーティでは大統領も同じ部屋にいましたが、あまり気にせず我々で話などをしていました。すると、保守サービスの会社の社長が、

「あの大統領の横にいる女性は私の妹だ、彼女は大統領夫人だ。」

「へっ!」

こいつ大統領の義理の弟だったの?!

良く考えてみれば、このような国では大統領夫人が何人かいることも多々ありますが、それでも大統領の義理の弟であるというのは驚きでした。

その時は驚いただけでしたが、その後になって気が付きました。

この保守会社には非常にタイミングよく太陽光発電の設置業務や売り上げが発生している。例えば、太陽光発電の学校やクリニックへの設置が定期的に発生している。

おそらく、保守事業では赤字になるので、この社長が大統領に泣き付いていろいろ仕事を回してもらっていたのではないかと思います。

しかし、私の調査報告書ではこの社長が大統領の親戚であることには触れませんでした。報告では保守サービスは持続して行われていて、それ自体の収益は赤字ではあるが、他部門の収入でカバーしている、という結論にしました。大統領の義理の弟であるという立場を利用していたのかもしれませんが、それでも赤字の保守サービスを継続して実施していてくれたということに敬意を表して。

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