シリアのプロジェクトは太陽光発電ミニグリッド、大型のソーラーホームシステム、太陽光発電揚水ポンプ、太陽光発電淡水化システムと随分盛りだくさんの内容ですが、これらは相手国のニーズによるものでなく、仕掛けた会社ができそうなものをずらっと並べて、後の市場開拓のための実績にしようというものでした。
一般的に、国際協力プロジェクトでは相手国のカウンターパートと協力して事業を実施するという形をとります。このプロジェクトではシリアの高等技術研究所がカウンターパートになっていました。国際協力は貧困対策が基本的な思想であり、そんなところの研究を支援すること自体、JICAの目的に合致しているのかという疑問が残ります。実際、プロジェクトが始まってから、設備を設置してカウンターパートに技術移転するだけで済まそうとするプロジェクトチーム側と、設置された設備の運営体制や電化計画への反映を求めるJICAとの間の考えの違いが生じ、なかなか話がまとまりませんでした。
シリアは発展途上国の中ではかなり進んだ国で、電化も進んでいました。プロジェクトで太陽光発電を設置した村落も数年のうちに電化され、太陽光設備はほとんど不要になっているようです。このプロジェクトがシリアの社会開発に何か役に立っているという感じはしません。やはり高等技術研究所が太陽光発電を勉強するだけに終わったようです。
もっとも、シリアは皆様もご存じのとおり内戦状態になってしまったので、今、これらの設備がどのようになっているか想像もつきません。太陽光発電が設置された場所は、TVなどでも良く登場するアレッポ周辺です。
マリやシリアのプロジェクトは仕掛けた会社が国際協力プロジェクトを利用しようとして作ったものの典型的な例と言えるでしょう。90年代頃までは、太陽光発電に限らず他の分野でもこのようなプロジェクトが多かったのではないかと思います。プロジェクトには大抵、商社やメーカーが動いていました。
初めから市場開発のために日本の会社を支援することがプロジェクトの目的なら、そのようなプロジェクトでも問題ないでしょうが、JICAプロジェクトは相手国を支援することを標榜しているので話がややこしくなります。
その後、プロジェクトはだんだん改善されてきましたが、今は途上国もかなり進んできて、「太陽光発電で無電化の村に電気を」というような単純なアイデアでプロジェクトを作るのが難しくなっています。
一方で中国などは援助をネタに自国への見返りを狙うプロジェクトを盛んに仕掛けてきています。日本もきれいごとの援助から脱皮して、新しい援助の形を考えないといけない時期になっているように思います。
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