前回のブログで、アモルファスシリコン(a-Si)太陽電池は蛍光灯に対しては変換効率が良くなることを指摘しました。おそらく蛍光灯下では変換効率は20-30%になると思います。要するに太陽光では利用できなかった長波長の光が、蛍光灯光には含まれていないので、その分、何もしなくても変換効率は上がるということで、言われてみれば当然のことですが、言われなければ気が付きませんでした。
a-Siの蛍光灯下での効率の話を華々しく発表したのはカネカです。30年ほど前の話になります。但し、これは私の想像を含めた話なので、間違っているかもしれません。
当時はa-Si太陽電池が世間の注目を浴びていて、多くの会社がその研究開発に取り組んでいました。
その中で、突然カネカから「a-Si太陽電池で20%を超える変換効率達成」というような意味の(良く覚えていません)新聞発表がありました。驚いて新聞を読むと、大した技術開発は無く、蛍光灯との相性が良くて高い効率を示すというような意味の記事でした。よく考えてみれば、どこのa-Si太陽電池も蛍光灯下ではそれぐらいの性能を示せる筈なので、拍子抜けだったわけですが・・・。
おそらくあまり中身を良く知らないカネカの経営陣が、びっくりするような変換効率の値に舞い上がり、新聞発表してしまったのではないかと想像しています。
カネカの新聞発表については更に逸話があります。
a-Si太陽電池に光劣化があることは昔から知られていました。しかしカネカはまた突然に「a-Si太陽電池の光劣化を解決」と発表しました。これは学会発表がある時にタイミングを合わせた発表でした。当然、各研究機関や会社がカネカの学会発表に詰めかけたわけですが、カネカからの発表は「a-Si太陽電池の熱劣化を低減させた」という発表だけでした。光劣化に関する質問が出ましたが、カネカからは「光劣化は関係ない」という答えのみ。
新聞を確かめると確かに「光劣化を解決」となっているわけですが、これもおそらく良く中身を知らない経営陣が「熱劣化」と「光劣化」を混同し、a-Si太陽電池で大問題になっている「光劣化」を解決したのだと舞い上がり発表してしまったのではないかと想像しています。
どちらの発表も、あっという間にネタ落ちしてしまい、笑い話のようなもので大した騒ぎにはなりませんでした。
まぁSTAP細胞もそうですし、「常温核融合」もそうですが、太陽電池の分野でも十分な吟味をせずに先に新聞発表して目立とうとするような安直な行動は見られていました。
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