さて「ソラメンテ」を使って、いよいよ測定です。
測定対象のストリングは240Wのパネルが7直(計1.68kW)でVoc約240V、Isc約8A。一つのパワコンには4つのストリングが並列に入力されて計6.72kW(これは復習)。
この発電所の動作は、これまで遠隔監視で得られる出力値で見る限り特に問題はなかったので、おそらく異常はないと思われます。従って、今回の測定は発電所を検査することより、各測定器の使い勝手などの比較をすることに重点を置いています。
で、パワコンの入力ブレーカーを切り、プローブをあてると239V、22Ω。
ん??かなり抵抗が高いな。
このパワコンに並列に繋がっている他の3つのストリングも測定してみましたが、他も同じような値。
22Ωがなぜ高いかというと、―――
このストリングでは電流が最大8Aぐらいまで流れます。
22Ωも抵抗があると160-170Vも電圧降下が起こるということ。
これはあり得ません。ブレーカーを切るまで順調に発電していました。
プローブの接触不良かもしれないので、何度も図りなおしましたが同じような値です。プローブの接触不良とも思えません。
原因究明はさて置いて、とりあえず「ソコデス」を使い同じように測定してみることに。
そうすると4つのストリングのうち3つは抵抗が10Ω以下で、一つだけ10.9Ω(「ソコデス」の場合、10Ω以下は「10Ω以下」と表示されるだけ)と測定されました。
こちらの方が現実的な値と見られますが、それでも10.9Ωはやや高い。
このアレイに異常があるとは思えませんでしたが、「異常があるかもしれない」と仮定して、「サーモビュアー」と「IVカーブトレーサー」による測定の出動です。
まず「IVカーブトレーサー」。
「ソラメンテ」や「ソコデス」と同じようにパワコンの入力端子から測定。
この測定には約30秒もかかる。もっと高級なIVカーブトレーサーなら1-2秒で測定できるのですが、何分このトレーサーは安かったので時間がかかります。30秒の間に日射が変化すると正確な測定ができません。それがこの安いIVカーブトレーサーの欠点です。
IVカーブトレーサーで測定すると、ほぼ正常なIVカーブが得られるものの、曲線に微妙な歪みが見られます。(すみません、データーセーブを忘れていたので、特性曲線見せることができません。また別の機会に特性曲線の歪みの例をお見せしようと思います。)
この歪が測定中の日射の変化によるものか太陽電池のせいなのかはわかりません。
太陽電池のせいだとすると、マイクロクラックなどの影響で歪んでいる可能性があります。
現実にはそれほど問題にならないような「歪み」ですが、更に「サーモビュアー」を使って異常モジュールがないかチェックすることにしました。
「サーモビュアー」の像でも太陽電池の色はほぼ均一で、一部のセルにやや温度の高い(3-4°C)ものがあるぐらいでした(すみません、この像もセーブし忘れたのでお見せすることができなくなりました)。
太陽電池モジュールの中に電流値の低いセルがあると、どうしてもそのセルの温度は高くなります(このメカニズムについては別途説明したいと思います)。このためできるだけセルの特性をそろえてモジュールを作りますが、どうしても多少のバラツキは残るので、多少の温度分布が生じるのは止むを得ないと思います。逆にサーモビュアーで見て温度分布が均一であれば、なかなかよく品質管理して生産しているモジュールだと言えるでしょう。
まぁ、多少の温度分布や抵抗の大きなストリングはありましたが、このストリングは異常なしということにしました。
しかし、この測定で「ソラメンテ」の値は不可解だったので使うのを止め、残りの8つのアレイは「ソコデス」を用いて順次測定し、発電所の検査は終了しました。
発電所は異常なしです。
かかった1時間ほどで、意外に簡単に終わりました。
さて、今回の測定の内容を理解するうえでは、太陽電池の「抵抗」(もう少し専門的にいうと「直列抵抗」)の意味をより深く理解することが望まれます。これと関連して「IVカーブ」や「発熱」についてもより深く理解した方が良いと思われます。
実は、測定の後、「ソラメンテ」の測定値が高すぎることについてメーカーと議論したので、それを紹介したいのですが、そのためにも「抵抗」や「IVカーブ」の意味をより理解しておいた方が良いと思います。
次回からはまずそのあたりの説明をしようと思います。
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