最近の太陽電池はセルの厚みが薄くなったせいか、マイクロクラックによる性能低下が起こるようになりました。マイクロクラックとは僅かなクラックで目には見えないものの、場合によっては太陽電池の性能を大きく引き下げる恐れがあります。メーカーでは出荷時にEL検査を行ってマイクロクラックのあるモジュールの出荷を防止するところも多くなりました。
一方で、出荷時にマイクロクラックが無くても輸送時や設置時に、また設置後にマイクロクラックが発生するという説もあります。その典型として、設置工事時に人がモジュールに乗りマイクロクラックが発生するという話もありますが、私はこれは少し疑わしいなと思っています。確かにモジュールに人が乗るとマイクロクラックが発生しそうですが、これを確かめた事実は無いと思います。
そもそも、マイクロクラックが発生していても電極が切れていなければ特性の低下を起こすわけではありません。従って製造時にマイクロクラックがあったとしても、出荷検査で完全にチェックするのは困難だと思います。
一方、モジュールはEVAという樹脂で太陽電池セルを封止していますが、その際にかなりのストレスを発生する可能性があります。製造時にこのストレスを逃がさないと、あの強化ガラスが反り返ったり割れてしまったりするほどです。
また、EVAの熱膨張率はシリコンや金属より遥かに大きいので、設置後の温度サイクルで膨張/収縮のストレスを繰り返し、例えばインターコネクタが外れてしまったりします。インターコネクタの接続不良や断線は、もともと接続が弱かったこともあるでしょうが、EVAからのストレスで加速されて起こります。
従って、出荷時にはセル特性に影響を与えないような僅かなマイクロクラックでも、EVAからのストレスでクラックが進み、セル特性を損ねるようなクラックになることは十分に考えられます。確かめた訳ではありませんが、EVAからのストレスの方がパネルに乗って与えるストレスよりずっと大きいのではないかと思っています。
このようなことからパネルに乗ってマイクロクラックが発生するという考え方には疑問を持っている訳です。もちろん、パネルに乗ってマイクロクラックが起こる可能性はありますが、パネルに乗らなければマイクロクラックが起こらないと安心することできません。
最近の太陽電池はセル厚みが薄くなり、基板品質もギリギリのところで作っているため、昔のものよりマイクロラックが起こりやすくなっていると思います。設置したパネルが経年のストレスでクラックが進み、急に出力が低下するなどということがあり得ないとは言えません。
設置したからと安心せず、出力の状態を頻繁にチェックして異常がないか確かめていくことが望まれます。
マイクロクラックのEL像(環境ビジネスより)
少し追加します。
確かに人が乗ってクラックが発生するということもあるのでしょうが、私は次のような理由からクラックの責任はメーカーが負って欲しいと考えています。(人が乗ってクラックが発生してもその責任は原則メーカーにあると考えています。)
1.メーカーに逃げ道を与えないように
2。メーカーと設置業者で責任の擦り付け合いになってユーザーが泣きを見ないように
3.中国のいい加減なモジュールに大きな顔をされないようにするために
まぁ、個人的な考え方ですが。
コメント有難うございます。経験に基づく話なので尊重する必要があります。人が乗ってマイクロクラックが発生するという可能性も十分に考えないといけませんね。
こんばんは。私は、施工時に人が乗るとマイクロクラックが発生する説を唱えてる張本人ですが、これには理由があります。同じパネルでも発電所によってマイクロクラックの発生率がまるで違うからです。私の発電所を含め、鹿嶋某所におけるマイクロクラックの発生率は2年間に渡り3000枚以上設置して1枚あるかないかです。この現場では、施工時に人が乗って無いのは明らかです。私も施工してますから。しかし、明らかに人が乗って施工している現場では、同じパネルでもマイクロクラックが相当量発生しています。施工時期はほぼ同じですし、ロットによるものとは考えにくいです。また他のパネルでも、マイクロクラックが大量発生している発電所は分譲が多く、オーナーが施工現場に立ち会って無い場合がほとんどなようです。