昨年、京都大学の安田陽特任教授が指摘した送電線の空き容量の問題が、再び朝日新聞に取り上げられ話題になっているようです(基幹送電線、利用率2割 この記事は有料なので読めない方はこちらを参考に 「空き容量ゼロ」のはずが・・・基幹送電線の利用率、大手電力10社の平均は「2割」にとどまる)。
安田先生の分析は電力量kWhベースで大胆に行っていますので、事故時の予備能力を持ったうえで最大需要に対して余裕度を見込んでいる電力会社側からは反論もありますが、さすがに利用率2割で「空き容量ゼロ」だから再エネを接続できないと言われても不満に感じますね。しかも「空き容量ゼロ」とよく言っている東北電力が一番送電線利用率が低いというのも、不満を増大させますね。
電力会社がこれまで使ってきた「空き容量」の定義がかなり余裕を見込んだもののようで、多分、「空き容量ゼロ」であっても余裕はあるのではないかと私などは勘ぐっています。
ネットを見ていると送電線に「余裕はない」という反論がいろいろありますが、どれも概念的で説得力が無いですね。「余裕はない」という反論は極めて簡単で、電力会社はデータを持っているのですから、一番余裕が厳しい時の送電線利用率を提示して「こういう状況だから余裕はない」と示せば済むことですが、安田先生の指摘後2ヵ月も経つのに全くそのような反証はありません。それどころか、実は「空き容量があった」という話が出てきました(東北電、再生エネ調達拡大 送電の「空き」やりくり)。
まぁ、背景はともかく、東北電力にやり繰りを促したエネ庁の努力に感謝して、追加された「空き容量」を有効利用できるように再エネ側は努力しなければなりませんね。
しかし、ちょっと気になるのですが・・・、
安田先生のように「空き容量」を電力量で計算するのも乱暴ですが、電力会社の言うように接続される発電設備容量から計算するのもどうなのでしょう。どんなに多くの発電所を接続しても、需要が無ければ電流は流れず余裕度100%ですからね。多分、発電能力から計算すると送電線容量はいっぱいなのだけれど、実際にはそれほど需要がないのでスカスカというのが現状なのでしょう。このために「余裕が無い」という簡単な反証さえ示すことができなかったのだと思います。まぁ、そんなところで「空き容量があった」と言わざるを得なかったでしょう。
いずれにせよこれに関しては安田先生の貢献は大きいですね。
また、安田先生は「電力事業運用の内容がブラックボックス化していて実情が掴みにくい。もっと情報公開して、決定プロセスなどを透明化して欲しい」と言うようなことも言っていました。送電線空き容量の問題も、運用データが公開されていればもっと議論が明快にできたでしょう。
まだまだ情報公開が必要ですね。
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