2007年にNEDO (新エネルギー産業技術総合開発機構) が「なぜ日本が太陽光発電で世界一になれたのか」という本を出しました。皮肉なことにこの本を出した直後、世界一はドイツに抜かれることになったのですが、確かにその時の日本は太陽光発電で世界一でした。NEDOは様々な国家プロジェクトを作り、日本が太陽光発電で世界一になるのをけん引してきた機関です。単に技術開発だけでなくこのような本を出して過去を振り返ったというのは面白く貴重な取り組みだったと思います。
本の内容は3章からなり、第1章で太陽光発電開発に取り組んだ7つの事例が紹介され、第2章でこれまでの日本の取組の歴史、第3章にその時の太陽光発電の概要が書かれています。読みやすい内容で、これを読めば当時の太陽光発電の状況やそれまでの取り組みをおおよそ知ることができます。太陽光発電に携わる人にとっては必読の書かも知れません。
ただ、私としてはこの本に書かれている内容だけでは少し不満で、「日本が太陽光発電で世界一になれた」理由をもう少し挙げたくなります。
日本が太陽光発電で世界一になるまで実に様々な積み重ねがありました。中でも私にとって特に重要だと思われるのは住宅用太陽光発電導入支援策まで至る過程です。日本の太陽光発電の歴史で有名なところではサンシャイン計画があり、そこでは太陽電池の開発だけでなく電源としての実証試験など様々な取組が行われてきていました。しかし太陽光発電はクリーンエネルギーとして一般受けは良かったものの、高く不安定な電源だとして電力や産業からはなかなか相手にされませんでした。
このような状況の中で何とか系統連系要件を引き出し、実証試験を行い、系統連系での住宅用太陽光発電の設置を可能にするのには、実に多くの人の努力が必要でした。住宅用太陽光発電の導入を可能にするためには、技術的な問題だけでなく規制や利害関係が既存の組織に強く影響を与えるため、影響を受ける組織からは強い抵抗がありました。規制が絡むので、対策も国がかりで進めなければなりません。当時は資源エネルギー庁の太陽光関係者が中心となって、NEDOや大学・研究所、更に民間会社の関係者と連携して絶えず努力していたと思います。
90年代前半はこのような努力の積み重ねで、なかなか相手にされなかった太陽光発電が系統連系で住宅屋根に載せられるようになり、更に90年代後半には世界的な環境意識の高まりで(京都会議の影響も大きかったが)急に広がってきたと思います。
初めに挙げた本では第1章で7つの成功事例が紹介されているので、何も知らない人が読むと、あたかもその人たちが日本の太陽光発電の基礎を作り上げたような錯覚をしてしまうかもしれません。
太陽光発電も今や世界規模の大きな産業になりました。この基礎を築くのに日本は大きな役割を果たしたと言えるでしょう。それだけの役割を果たすのには、実に多くの人の努力が積み重ねられたのだと、当然のことですが、つくづく思います。
コメントを残す