今では電卓は太陽電池駆動が常識ですが、昔は乾電池やボタン電池で駆動されていました。太陽電池駆動になってきたのは20数年前だったと思います。電卓に太陽電池を使うことが発明と言えるのかどうか分かりませんが、電卓に太陽電池を導入したのは日本でした。
電卓に使われている太陽電池はアモルファスです。当時、アモルファス太陽電池は未来の太陽電池として注目され盛んに研究されていました。アモルファスが脚光を浴びた理由は、結晶に比べて厚みが千分の一ほどで済むので、大幅にコストダウンが可能になるという期待からでした。
残念ながらアモルファス太陽電池は光劣化の問題が解決できず、期待からは外れていくことになりましたが、電卓の電源としてはしっかり使われています。
アモルファス太陽電池は太陽光に対する発電効率は低いですが、蛍光灯に対する発電効率は結晶よりずっと良いという特徴を持っています。従って電卓のように蛍光灯下で使われることが多く消費電力が少ない用途には極めて適した電源だと言えるでしょう。
このアモルファス太陽電池を電卓に導入したのはサンヨーだったと思います。サンヨーはアモルファスの研究で世界をリードする位置にいました。また研究分野でリードしていただけでなく、用途開発にも熱心に取り組んでいたようです。
当時は後に社長になる桑野氏がアモルファスグループを率いていて、電卓への応用も彼が力を入れていたようです。桑野氏は電卓に太陽電池を応用する意義について、・・・
「世界中で乾電池やボタン電池を手に入れることのできるのは先進国の人達だけである。太陽電池を使えば電卓のマーケットはもっと広がる。」
・・・と言って売り込んでいったらしいです。
実際、その後ソーラー電卓は一気に世界に普及していきました。
今でこそFITのおかげで太陽電池が世界的に普及してきていますが、当時は太陽電池の用途というと宇宙船や灯台などの特殊な用途しかなく、ソーラー電卓の出現というのは、太陽電池の歴史の中で大きな意義を持つ出来事だったと思います。
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