前回、HITの説明でアモルファスシリコン(a-Si)が出てきました。この際、更に脱線してa-Si太陽電池について語らせて下さい。
a-Si太陽電池は一時期脚光を浴びましたが、光劣化するという致命的な欠陥が解決できず、今ではあまり顧みられなくなっています。光をあてて使う道具が、光をあてると劣化するというのではまるでギャグみたいな太陽電池ですが(この太陽電池はできるだけ光をあてないで下さい、なんて)・・・。
で・・・・、
a-Siと結晶シリコン(c-Si)はかなり物性が違います。
まずa-Siはc-Siより光の吸収効率がずっと良く、1um以下の厚みで十分光を吸収し太陽電池が作れてしまいます。これが当初a-Siが脚光を浴びた理由でした。当時のc-Siは非常に高く、a-Siだと厚みが数十分の1で済むので大幅に安くなると考えられました。
確かにコストは下がったのですが、a-Siを作るプロセスに意外にコストがかかり、思ったほどのコストダウンにはならなかったようです。それに最近はc-Siのコストがずいぶん下がったので、a-Siは競争力を失いつつあります。
次に光の吸収領域がかなり違います。
これを説明するために下の図を作りました。
a-Siが光吸収できるのは波長が0.3-0.8umぐらいの領域です。
c-Siが光吸収できるのは0.3-1.1umぐらいです。
ところで、図のように太陽の光は0.3umぐらいから3umぐらいまでの波長の光からなっていて、そのうち目に見えるのは0.3umぐらいから0.8umぐらいまでです。
残念ながら太陽電池はこの光を全部吸収できるわけではありません。これが太陽電池の変換効率を律速する大きな要因になっています。当然、吸収できる範囲の広いc-Siの方が有利で、変換効率も高くなります。
さて・・・、
説明で気が付いたと思いますが、a-Siの吸収帯域はちょうど可視光領域と一致しています。a-Siの吸収領域はc-Siより狭いですが、逆にこの領域の光に対してなら、c-Siより変換効率が良くなっています。従って、可視光だけで使うならa-Si太陽電池の方がc-Si太陽電池より良いということになります。
ということは、
蛍光灯は可視光だけなのでa-Si太陽電池を使った方が良いということになります。今ならLEDに対してもa-Si太陽電池の方が良いと言った方がいいかもしれません。
室内で使う電卓などにa-Si太陽電池を使っていることは意外に合理的だったわけです。
a-Si太陽電池が蛍光灯に対して変換効率が良いということに関して、過去に面白い逸話があります。この際、脱線し続けて次回はその話をします。
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