90年代の初め頃に行われたプロジェクトだったと思います。この頃のプロジェクトは日本の民間会社が仕掛けたものが多かったですが、これは珍しくJICAが開発したプロジェクトでした。
キリバスというのは南太平洋にある小さな島嶼国で、ここでJICAは100Wほどのパネルを使ったソーラーホームシステムシステム(SHS)を使った地方電化のパイロットプロジェクトを行いました。
ここで少しソーラーホームシステムについて復習しましょう。
普通のソーラーホームシステムは50Wほどの太陽光パネルと50Ahほどのバッテリーで小型の蛍光灯(10Wほど、この頃はまだLEDが無かったので蛍光灯が使われた)やラジオなどを駆動するものです。
当時の太陽光はまだ高かったので20万円近くかかりました。50Wでは少し電気が不足するので100W欲しいところですが、途上国の購買力を考えると50Wが限界でしょう。ここではJICAのプロジェクトなので資金が潤沢にあるため、100Wシステムにできたのだと思います。
ソーラーホームシステムはバッテリーを使った独立システムで、各戸に個別に設置されます。使い勝手の悪いところはありますが、厄介な配電線を敷設する手間が省け、素人でも簡単に設置できるので、途上国では重宝されるシステムです。
問題はバッテリーを使っていることです。バッテリーは2-3年で寿命がきて交換が必要となります。交換費用はユーザーの負担しなければならないわけですが、途上国の人には結構高い負担なのでなかなか交換されません。結局、バッテリーの寿命とともにシステムは放置されることが多く起こります。
そのことはJICAもわかっているので、バッテリー交換サービスや分割払い、積立金などの制度を作って何とか持続性を高めようと工夫していました。このような制度を作っても、バッテリーの交換にコストがかかるという本質的な問題は解決されていません。
ほとんどのプロジェクトではバッテリー交換が行われず、システムはバッテリー寿命とともに放置されていました。
しかしキリバスではバッテリーが交換され、システムは持続的に運営されていました。理想的な状態です。
90年代の初めというと、ソーラーホームシステムのプロジェクトとしては初期のもので、この成功は良いモデルとなり、他の国でのプロジェクトにも影響を与えることになりました。
保守サービスや分割払いの制度を作ったことが良かったのでしょうか。
実は、キリバスでの成功には意外な裏がありました。
少し長くなってしまったので、これについては次回、説明します。
30年ほど前になりますか、JICAの開発調査でキリバスの太陽光発電
導入計画調査を行いました。内容は以下の通りです。
(1)北タラワに戸別の太陽光発電パネル・バッテリー・照明器具を設置しました。
(2)SEC(Solar Energy Company)を設立し、料金徴収とメンテを行うことにしました。
(3)導入戸数は50戸程度と記憶しています。
(4)SECの社長アクラ̪氏を日本に招聘し、研修を行いました。
その後、JICAの仕事で地方電化計画に参加しました。
・ラオスの太陽光・小水力導入計画と施工(工業大臣賞受賞)
・ジンバブエの太陽光導入計画
・インドネシア・タイ・ベトナムへの太陽光導入計画調査
・タンザニアでの電力計画調査(含む地方電化)
などがあります。
43歳の時から71歳の今日まで世界の電化計画を推進してきました。
特にキリバスは最初の仕事でしたので、記憶に残っています。
今日まで、成功裏に稼働しているという報を受け嬉しく思っています。
井上友幸/㈱アイシーエナジー 代表取締役
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