中国の貧困農村が太陽光発電の導入で貧困脱出に成功したという記事がありました(太陽光発電で脱貧困/中国の農村、生活が変化/年収4倍 公益事業も充実)。「素晴らしい話ですね」と言いたいところですが、どうも腑に落ちないので内容を検討してみました。
いろいろ疑問に思う点があります。まず、中国の会社が貧困村の土地を借りて無償で太陽光発電を設置したという点。「土地を借りて」なら「無償で設置」というのは妙ですね。
「太陽光は年間60万~70万kWh発電して、約960万円の売り上げを村にもたらす」らしいのですが、これだとkWhあたりの売電価格が14-16円になります。中国のFITってこんなに高いのですかね。
また年間60万~70万kWhの発電なら400~500kWのパネルで間に合いますが、上の写真をみるとメガソーラークラスの規模と見られ、話が合いません。
更に年間960万円の売り上げを貧困家庭への手当や医療補助、老人ホームの建設、ビニールハウス280棟の建設、その他公共事業への支出に充てているとなっていますが、ちょっとお金が足りないのでは・・・。
本当はどういう話なのだろうと想像してみましたが、多分、現地に建設された太陽光はメガソーラークラスなのでしょう。設置した会社は土地を借りて太陽光発電を設置し、その売り上げで投資回収し、利益の一部を村に「土地の賃借料」として還元しているのでしょう。「年間60万~70万kWh発電」というのは間違いか、村の公共地などの発電分で、他に個人土地にも相当のパネルを設置していると思います。村に還元しているのは売り上げの1割程度でしょう。設置した会社はしっかり儲けています。ビニールハウスの設置は太陽光発電の利益を使って設置したのかもしれませんが、それだけでなく政府の補助金などを導入している可能性が高いですね。設置した会社に政治力のある人間がいて、うまく動いたのではないかと思います。
要するに、この手の成功談は内容を検証する必要があり、頭から信用しない方が良いということです。私も途上国太陽光発電導入の仕事に長年携わってきましたので、多くのプロジェクトを見てきましたが、その殆どが上記のような美談仕立てで報告されていました。
まぁ、美談仕立てで報告しても良いですけれどね。誰にも迷惑が掛かりませんから。
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