伊勢崎市の太陽光発電所事故についての詳しい報告記事が先月ありました(架台崩壊の背景に不十分な強度設計の可能性)。一言で言うと「架台の強度が不適切であった」に尽きますが、いろいろ解析している点が参考になります。
例えば、架台の崩壊したところの杭の強度は必要強度の11分の1しかなかったと解析しています。必要強度の計算に際しては風速(V0)を30m/sにしていました。
実際にその場でどのぐらいの風が吹いていたかのデータは無いと思いますので、おそらく気象庁などのデータをもとに仮定しているのでしょう。ここで30m/sで計算されているところを見ると、私がこれまで見てきた耐風速35m/sは結構良い値なのではという気がします。
もちろん、安全を考えるなら耐風速50m/s、60m/sと大きいほど良いに決まっていますが、コスト的に見合いません。現実的なところで35m/sという結果になったのでしょう。ただ、瞬間最大風速ではもっと大きな風速になっている可能性があるようです。このため、計算上は35m/sとしていても、これに安全率をかけて余裕を持たせるのが設計上の良識のようです。
またこの記事ではパネル留めの問題も指摘されています。強風で架台が歪むだけであれば自業自得で他人には迷惑をかけませんが、パネルが外れて吹き飛ばされると、人災事故も起こしかねません。従って十分注意する必要があります。
伊勢崎の場合は嵌合方式のパネル留めだったので、架台が歪むと嵌合が外れて飛ばされる恐れがありました。嵌合方式でもしっかりとした強度を保つことができれば良いわけですが、ここでは架台強度不足のためパネル留め強度が維持できなかったようです。
このように架台強度と言っても、架台そのものの強度、基礎の強度、パネル留めの強度、それらの相互作用といろいろ考えなければなりません。計算で全てを予測するのは難しく、正直言って、オーナー側でそこまではとても考えられません。オーナー側からは「最大風速〇〇m/sに耐えるアレイを作ってくれ。」と言うぐらいが関の山です。
オーナーがいくら頑張っても、旭化成のように偽装されてしまうとどうしようもありませんが、少なくともこちらの要求を明示する必要はあります。どれぐらいの強度にするべきか具体的なイメージが無くても、安全対策を十分考えるように要求すれば、普通の業者ならば対応してくれるはずです。その際、対策内容を文書で残していくことが望まれます。
安全対策にはコストがかかりますが、今、太陽光発電をやっている人はFITによる恩恵を受けているので、その分、「再生可能エネルギー普及促進」に貢献していかなければなりません。そのためのFITです。
メーカーや設置業者任せでなく、オーナー側も適切な強度、適切なコストの架台作りに協力し、太陽光発電普及のために貢献していきましょう。(私がオーナーなので、ちょっとオーナーサイドの発言になりましたが悪しからず!)
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