前回までに、JICAが世界アンケートをとり、その結果行うことになった太陽光発電プロジェクトを通じて気が付いた次の2点のうち、第1点まで説明しました。
- プロジェクト対象に選ばれた国は、日本人の専門家がいるなどJICAに手慣れた国であることが多い。
- 日本の太陽光メーカーはこれらのプロジェクトにほとんど関心を示さない
さて、今回は第2点についてです。
以前に書きましたが、90年代には日本の太陽光メーカーはいろいろな国際協力プロジェクトを仕掛けていました。もちろん、これらは自社の太陽光発電製品のビジネスにつながると期待してのことでした。なにしろ、JICAで調達してもらえれば途上国用特別仕様で定価よりずっと高いプレミアム価格で買ってもらえますから。
しかし、実際にプロジェクトを行ってみると予想以上にコストがかかり、思ったほど利益は出ないし、仕掛けにかかったコストはとても回収できませんでした。
一方、90年代の終わりになると日本では住宅用太陽光発電の普及が進み(まだFITほどではありませんが)、他の先進国でも太陽光発電のプロジェクトが増えてきました。こうなると楽な先進国の需要で売り上げが確保されるため、各メーカーは面倒な途上国のプロジェクトに対する興味を失ってしまいました。
従って、世界アンケートの後に行われた一連のプロジェクトのうち、最初こそ日本メーカーの機材が使われましたが、その後は現地で欧米のメーカーのものが調達されていました。
先進国のPV市場は、その後ドイツでFITが導入されるとともに更に膨らんできました。日本のメーカーはその対応だけで十分な市場を得られるようになったので、途上国のPVプロジェクトは欧米のメーカーのものを現地調達するのが常識のようになっています。
(もっとも、例外もあります。環プロ無償と言われるJICAの太陽光発電のプロジェクトが最近まで盛んに行われ、そこでは日本のメーカーのものが使われています。これについては理由がありますが、また別の機会に説明します。)
さて、世界アンケートの結果、盛んに行われた太陽光発電のプロジェクトは「太陽光発電技術で世界のトップにいる日本は、この技術で途上国を支援していく責務がある」というような枕詞でよく説明されていました。確かに当時の日本は太陽光発電技術で世界のトップに立っていました。しかしそれは先進国で太陽光発電を使う場合に対してであって、不便な途上国で使いこなす技術については、日本は経験不足(このテーマの最初に説明したタイ・パキスタンの失敗以来、日本は太陽光発電プロジェクトの経験が少ないため)で、諸外国のマネをして間に合わせていたようなものでした。
結局、前回の話も合わせると一連のプロジェクトは、途上国のニーズを掴んでいなくて、機材は欧米のものを使い、支援技術もいま一つ、という何のために日本がやっているのか分からない中途半端なものになってしまいましたが、私が見てきた限りでは、それでも日本は結構まじめに取り組んでいたと思います。
やはり日本人はまじめですね。
この世界アンケートにより10か国がプロジェクトの対象として選ばれましたが、実施された国は見直しなどがあり、ラオス、セネガル、モンゴル、バヌアツ、セネガル、ミャンマー、ソロモン、マレーシア、ボリビア、ボツワナあたりだったと思います。内容は前に説明した90年代のプロジェクトとそれほど変わらないので割愛します。
これらのプロジェクトは全て「開発調査」で行われました。その後、「開発調査」以外に「技術協力プロジェクト」や「環プロ無償」なども実施されてきました。
あと何回か続けて、もう少しこの辺りの話もしたいと思っています。
読みづらいブログかもしれませんが、興味のある方は是非お付き合い下さい。
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