テスラ社のバッテリーパック新製品パワーウォールの10kWhについて少しコスト解析してみます。
まずこの製品の使い方ですが、日常の電源として使うと考え、毎日ほぼ100%充放電すると見なします。これはバッテリーの使い方としてはかなり厳しいものですが、これで10年間使うとします。ふつうの鉛バッテリーではとても10年は持たないでしょうが・・・。
単純に考えると毎日10kWhで365日、10年間ですから36,500kWhの電気を充放電するのでしょう。しかし毎日10kWhをうまく充放電できるとは思えませんし、充放電効率はせいぜい90%ぐらいで、10年も使っているとだんだん容量が減ってくるでしょうから、実質的に使えるのは30,000kWhぐらいとみても十分すぎるぐらいでしょう。
このパワーウォールの値段は3,500$ 即ち42万円。
従って1kWh あたりのコストは単純計算で
420,000 ÷ 30,000 = 14円/kWh
ということになります。
ところで、現在の太陽光発電のコストはどれぐらいでしょう。
太陽光発電1kWあたりのコスト30万円、1kWあたり1年に1200kWh発電し20年間使えるとすると、太陽光発電1kWhは単純計算では
300,000 ÷ 1,200 ÷ 20 = 12.5 円/kWh
となります。
尤も、今の太陽光発電はMPPTといわれる方法で太陽光側の電力を全て交流に変換する方式なので、そのままではパワーウォールと組み合わせることができませんが、ここでは組み合わせて使えると仮定します。すると、太陽光発電を組み合わせたコストは両者の和で 26.5円/kWh ということになります。これでも商用電源より少しコスト高ですが、太陽光/パワーウォールの方は他にコストアップ要素も考えられるので、単純な経済性の比較からではパワーウォールを使うのは得策と言えないでしょう。
パワーウォールのようなバッテリーパックはこれまでUPSなどに使われていました。そこでは電源異常があると何百万円、何千万円の損失が発生する恐れがあるため、たとえ1kWhが千円、二千円してもバックアップする価値がありました。しかし、対抗相手が通常の家庭用の電源では、1kWhあたり20-30円と競合することになります。パワーウォールは確かにずいぶん低価格になりましたが、まだ商用電源と対等に勝負するのは難しいようです。
しかし、「どうしても電力会社の電気を使いたくない」とか「災害時や停電時の備えをしたい」と言う人にとっては、パワーウォールを使えば商用電源とそれほど変わらないコストで電源を確保することができます。この需要は予想外に大きいのではないかと思います。
やはりパワーウォールは新しいマーケットを切り開く能力を持っていると思います。
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