系統用蓄電所の「節税商品化」と系統拒否の怪 ― 国民負担を強いるエネルギー政策の矛盾

(カテゴリ: お得 ニュース)

はじめに:エネルギー政策に漂う「底知れぬ違和感」

現在、日本のエネルギー政策の最前線で「系統用蓄電所」という言葉が脚光を浴びています。 太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、天候によって発電量が激しく変動します。その「余った電気」を貯め、「足りない時」に流す。この需給調整の役割を担う系統用蓄電所は、間違いなく日本のエネルギー自給率向上と、私たちが日々悲鳴を上げている「電気代高騰」を解決する切り札のはずでした。

しかし、その実態を紐解いていくと、そこには合理性とは程遠い、極めて歪な構造が見えてきます。

国家のエネルギー事情を改善するために最大限導入すべきはずの装置が、なぜか一部の法人のための「節税商品」としてパッケージ化され、一方で肝心の「電力網(系統)」への接続を拒まれるという事態が起きているのです。この巨大な矛盾の正体は一体どこにあるのでしょうか。

 

26-3-26-2 太陽光発電ムラ市場

「節税」という劇薬が生んだ、インフラの変質

まず、現在の系統用蓄電所を取り巻く「お金」の流れを見てみましょう。 今、この事業に多くの法人が熱視線を送っているのは、純粋に「日本のエネルギーを支えたい」という志に惹かれているからだけではありません。国が用意した、あまりにも強力な「税制優遇」という劇薬に引き寄せられている側面が強いのです。

現在、一定の要件を満たす系統用蓄電所の導入には、「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」などが適用されます。これにより、大きな利益が出ている企業には以下の二つの選択肢が与えられます。

 

  • 税額控除: 投資額の最大10%を法人税から直接差し引く。
  • 特別償却(一括償却): 数億円単位の設備投資費用を、購入したその年度に全額「経費」として計上し、利益を差し引く。

 

好業績の企業にとって、そのまま法人税を納めるよりも、その資金で蓄電所を買い、税金を大幅に圧縮する方が「お得」になります。本来なら国庫に入るはずの税金が、特定の企業の資産(蓄電所)に化ける。これが、系統用蓄電所が「節税商品化」している実態です。

 

最大の謎:需給調整のための装置が、なぜ「系統」に拒まれるのか

ここで、誰もが抱くであろう最大級の矛盾に突き当たります。 国がこれほどまでに優遇し、企業が投資意欲を燃やしているにもかかわらず、いざ蓄電所を建てようとすると、電力会社から「系統に空きがない(空き容量不足)」という理由で接続を拒否されるケースが後を絶たないのです。

これは、私たちの身近な生活に例えれば、その異常さがよく分かります。

家庭用蓄電池を想像してみてください。 「日中の太陽光パネルで電気が余り、時間帯別価格で電気がタダ同然(0円程度)になっている間に充電して、夜間の高い時間帯にその電気を使う」 これは、家計にとっても非常に助かりますし、電力網全体の需給バランスを整えることにも繋がります。

それなのに、いざ設置しようとしたら、電力会社から「電線が太陽光の電気でいっぱいで、これ以上電気を流せないので、蓄電池の取り付けは許可できません」と拒否されるようなものです。

おかしいと思いませんか? 蓄電池は、その「いっぱいになっている電気」を吸い込み、混雑を緩和するためにある装置です。本来なら、電線が混んでいる場所ほど、優先的に導入されるべき存在なのです。それなのに、「混んでいるから繋げない」という理由で、インフラとしての機能を根底から否定されている。これが現在の系統用蓄電所を巡る、あまりにもシュールな現実です。

 

再エネ賦課金の「痛み」と、法人優遇の「甘え」

ここで私たちが直視しなければならないのは、この矛盾のシワ寄せがどこに行っているか、という点です。

私たちは毎月の電気代の中で、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という項目で、決して小さくない金額を徴収されています。これは「再エネを普及させるための国民全員の負担」として、半ば強制的に家計を圧迫しています。国は「再エネ導入にはコストがかかるのだから、国民が負担するのは当然だ」と言わんばかりの姿勢です。

ところが、その裏側ではどうでしょうか。 法人が蓄電所を作れば「税金を払わなくていい」と優遇され、本来国庫に入るべき法人税が削られています。一方で、国民は「再エネのため」と賦課金をむしり取られる。

つまり、国民には「負担」を煽りながら、法人には「節税」という利益供与を放置しているのです。

今、節税によって失われている税収は、本来であれば将来の老朽化したインフラの維持費や、私たちの社会保障費に充てられるべき公的なリソースです。特定の企業の資産形成を手助けするために、私たちが将来受けるべき公共サービスが削られているとしたら、それは「エネルギー政策」の名を借りた、壮大な所得の再分配(弱者から強者へ)ではないでしょうか。

 

「儲けさせない」一方で「税金は負ける」という二律背反

国は現在、系統用蓄電所の収益に一定の上限額を設定する動きを見せています。これは、投資商品としての過度な加熱を抑制するための措置とされています。

しかし、この方針自体が「法人への甘い対応」を象徴しています。 事業として真っ当に利益を出し、そこから正当に納税する「健全なビジネス」への道は上限設定で塞ぎながら、他方では「税金は払わなくていいから、蓄電所という箱を作れ」と、出口戦略としての節税メリットだけは残し続けているのです。

本来、国がやるべきことは、法人に「節税」というアメをしゃぶらせることではありません。電力の構造そのものに「大きな鉈(なた)」をふるう抜本的な改革です。

 

結びに:誰のためのエネルギー転換か

「系統に空きがない」という理由で、需給調整に必要な蓄電所の接続を拒否できる現行の送電ルール。先着順で枠を押さえている古い発電所の利権や、不透明な空き容量の算出方法。こうした「電力システムの聖域」にメスを入れない限り、いくら節税目的の蓄電所が乱立したところで、国民の電気代が下がることはありません。

 

私たちが求めているのは、以下の3つの決断です。

  1. 系統接続ルールの根本的見直し: 蓄電所を、空き容量に関わらず最優先で接続できる仕組みに変える。
  2. 法人優遇の是正: 単なる節税スキームとしての普及を止め、事業性によって利益を出し、正当に納税するサイクルへ導く。
  3. 国民負担の軽減: 再エネ賦課金で国民に痛みを強いるのであれば、それ以上に「電力構造の非効率」によって生じているコストを徹底的に削減する。

 

インフラは、特定の企業の税金対策のためにあるのではありません。国民すべてが等しく、安価で安定したエネルギーの恩恵を受けられるようにするために存在すべきなのです。

「再エネを増やす」という大号令の下で、私たちの税収と賦課金が消えていく。その行き先が、本当に私たちの未来のためになっているのか。系統用蓄電所という巨大な箱が、単なる「税金の逃げ道」で終わらないよう、私たちはこの政策の矛盾を問い続けなければなりません。

 


出典・参照元

  • 経済産業省:カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の概要
  • 資源エネルギー庁:容量市場における上限価格設定および過度な収益抑制に関する検討資料
  • 電力広域的運営推進機関(OCCTO):系統への接続回答等に関するガイドライン(先着優先ルールの現状)
  • 資源エネルギー庁:再生可能エネルギーの出力制御の低減に向けた取組について
  • 資源エネルギー庁:再生可能エネルギー特別措置法(再エネ賦課金の根拠法)
  • 環境省:系統用蓄電所の導入支援事業における要件および市場価格への影響調査

 

 

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