今年度の定期報告に、ついに「調達期間・交付期間終了後の計画」を問う設問が追加された。遅すぎると思う一方で、やっとここまで来たか、という思いもある。何年も前からブログで書き続けてきたことであり、少しでも多くの人にメディアの報道がいかに偏ったものであったのかを考えてほしい。
そして普段はメディア批判をしつつも、自分に都合の良い情報だけを鵜呑みにすることがないように自戒したいとも思う。
「大量廃棄」という言葉が一人歩きしてきた
太陽光パネルの廃棄問題について、メディアが「2030年代に大量廃棄が起きる」と報じるたびに、違和感を覚えてきた。数字だけが先行し、肝心なことが抜け落ちている。誰が廃棄するのか。いつ廃棄するのか。本当に全員が同じタイミングで辞めるのか。
「メガソーラー」「大量廃棄」を巡る議論は、アクセス数を稼ぎたいメディアや、インプレ目的のアカウントにとって格好のネタだ。「大量廃棄」「パネル墓場」といったパワーワードが繰り返され、現場の実態とはかけ離れた恐怖感が広まっていく。しかし、それを騒いでいる間も、事業者に「続けますか、やめますか」と聞いたメディアは、少なくとも私は知らない。
廃棄量を推計するなら、まず「継続意向」を把握するのが筋である。なぜそれを後回しにして、最悪ケースだけを叫び続けるのか。
今回の報告様式変更が持つ意味
今年度から追加された「FIT・FIP期間終了後の方針」に関する設問は、地味に見えて非常に重要な一歩だ。全国のFIT認定発電所、つまり制度に登録されているすべての事業者が回答対象になるため、ここで初めて公式なサンプルとして「続ける/廃棄する/未定」という意向データが集まることになる。
これが積み重なれば、「地域別」「運転開始年別」「規模別」に分けたときに、いつ・どこで・どれだけのパネルが廃棄フェーズに入るかという、リアルな予測が立てられる。「一斉廃棄」などというファンタジーがいかに根拠薄弱だったか、データが証明するはずだ。
廃棄は「波」ではなく「順番待ち」になる
FITの運転開始日は2012年から現在まで数年にわたって分布しており、調達期間は10年・15年・20年とバラバラだ。地域によって日射条件も経済性も異なるため、継続判断のタイミングも自ずと異なってくる。
継続意向データが揃えば、たとえば「〇〇県では2031〜2033年に小規模案件が集中して終了し、リサイクル処理の需要が高まる」といった地域別・時系列の情報が公開できる。リサイクル業者はその情報をもとに設備投資や人員計画を立てられるし、自治体は受け入れ体制を準備できる。つまり、パネル廃棄は「防ぐもの」ではなく「順序立てて処理するもの」として扱えるようになる。
地域・規模・運転開始年ごとに「廃棄予定時期」を可視化した工程リストが公開されれば、リサイクル産業の計画的な発展にも直結する。パネルの廃棄は危機ではなく、産業機会になり得る。
事業者に順番をつけることで見えてくるもの
さらに一歩進めて考えれば、FIT登録情報と意向調査を掛け合わせることで、事業者ごとの「廃棄見込み順」を整理することも不可能ではない。これはネガティブなリストではない。むしろ、回収・解体・リサイクルのリソースをどこに・いつ・どれだけ割り振ればいいかを示すインフラ計画の土台になるものだ。
「太陽光パネルが大量に捨てられる」という煽りは、この工程管理の視点が完全に抜け落ちた議論だ。鉄くずだって、家電だって、自動車だって、一度に全部廃棄されるわけではない。順番に処理されるから社会は回っている。太陽光パネルだけが例外になる理由はどこにもない。
遅すぎた対応。それでも前進は前進だ
繰り返すが、今回の設問追加は遅すぎた。10年前にFITが本格化した時点で、終了後の出口設計を制度に組み込んでおくべきだった。それをしなかった結果、空白期間に根拠のない不安が膨らみ、事業者は余計なプレッシャーにさらされてきた。
ただ、批判だけを続けても前には進まない。今回の変更を入口として、意向データの収集 → 地域別・時系列の公開 → リサイクル工程の可視化という流れを丁寧に積み上げていくことが、この問題の現実的な解決策だと考えている。
パワーワードに踊らされるのではなく、データに基づいた冷静な議論を。そのための土台がようやく作られはじめた。
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