日本政策金融公庫から、親展ハガキが届いた。
「親展」という二文字が、もうダメだ。定期的に届く公庫イベントの案内ではないと思い知らされる。
頭の中でシナリオが勝手に展開し始める。
まず浮かんだのが、金利の話だ。固定金利で借りたつもりだったけど、実は変動だったりして。最近、金利が上がっているというニュースを何度か耳にした。もしそうなら、毎月の返済額が変わってくる。家計簿を見直さなければいけない。いや、そもそも気づかずに変動で契約していたとしたら、それは完全に自分のミスだ。
次に浮かんだのが、もっと直接的に怖いやつ。引き落とし、できてなかったんじゃないか。先月、口座の残高が少ないなと思いながら、まあ大丈夫だろうと放置した記憶がうっすらある。もし引き落とし不能になっていたら、信用情報に傷がつく。延滞扱いになる。今後のローンに影響が出る。どんどん悪い方向へ想像が転がっていく。
親展ハガキひとつで、こんなにも心拍数が上がるものか、と我ながら呆れた。
意を決して、開けた。
――「借入の返済が完了しました。」
え。
もう一度読んだ。「借入の返済が完了しました。」
お知らせでも警告でも督促でもなく、完済の報告だった。
思えば、最初にお金を借りたときのことを覚えている。あのときは必死だった。事業を始めたばかりで、手元の資金がどこまで持つかわからなくて、毎月の返済日が来るたびに口座残高を確認していた。それがいつの間にか習慣になり、習慣になったころには返済することに慣れ、慣れたころにはもう気にしなくなっていた。
気にしなくなったころに、完済した。
ハガキを持ったまま、少しぼんやりした。怖かった時間が、急に懐かしいものになった。時間というのは本当に、気づかないうちに過ぎていく。怯えていた自分も、毎月コツコツ返していた自分も、全部ひっくるめて今日に至っている。
親展ハガキ、今度からはちょっとだけ怖くなくなるかもしれない。
――たぶん、次が来るまでは。
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