低圧系統蓄電所の分譲販売が始まった 「利回り25%」の数字を素直に信じていいのか?

(カテゴリ: お得 ニュース)

先日、太陽光発電の売買仲介サイトを眺めていたら、茨城県内で低圧の系統用蓄電池の分譲案件が複数掲載されているのを見つけた。税別2,000万円を切る価格帯で、想定利回り25%という表記がある。太陽光発電のFITが始まったころ、似たような案件を眺めた記憶がある。あのとき早く動いた人たちが結果として大きく利益を得た。では今回も「乗り遅れるな」なのか。それとも、何か見落としがあるのか——少し冷静に考えてみたくなった。

 

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そもそも「低圧系統蓄電所」って何をするものなのか

まずここから整理しておきたい。太陽光発電は「太陽が当たれば電気が出る」という分かりやすさがあった。では系統用蓄電所何で稼ぐのか。

仕組みはシンプルに言えば「安いときに買って、高いときに売る」だ。電力の卸売市場(JEPX)では、深夜や太陽光の発電が集中する日中など電気が余っているときの価格と、夕方の there-is-demand(需要)ピーク時の価格では大きな差が生まれる。その価格差を蓄電池に充放電することで稼ぐのが基本の収益源だ。

さらに、卸電力市場(JEPX)、需給調整市場、容量市場という3つの異なる市場から重層的に利益を得る仕組みがある。電力が足りなくなりそうなときに出力を絞ったり増やしたりする「調整力」を電力系統に提供することで、別の収益源も加わる。複数の市場から稼ぐ設計になっているらしい。

そして2026年4月から制度が変わった。制度改正により、連系出力50kW未満の低圧リソースが、アグリゲーターを通じて需給調整市場に参加可能となった。これまで数億〜数十億円の大型案件しか参入できなかった市場に、「6坪・49.5kW・約2,000万円」というスケールの、まったく新しい投資ティアが生まれたのだ。

茨城の案件はこういった近年の改正を基に生み出された低圧の分譲案件だろう。

 


「利回り25%」の数字、どう読むか

さて問題の数字だ。税別2,000万円を切る価格で年間売上500万円超、利回り25%——この数字は「表面利回り」だ。

太陽光発電のFITに慣れた人なら分かると思うが、表面利回りと手取りの利回りは別物だ。系統用蓄電池の場合、表面利回りから、電気代、メンテナンス費、土地代、保険料、運用委託費(アグリゲーター報酬)などを差し引いた手残りが実質の利回りになる。好条件の場合の実質利回りは18%前後という試算もあるらしいが、これはあくまで好条件が重なった場合の数字だろう。

太陽光発電と決定的に違うのは、同一エリアであっても、同じ設備であっても、運用するアグリゲーター次第で収益が大きく変動するという点だ。太陽光なら「日射量×パネル効率」で大方の発電量は計算できる。しかし蓄電池の収益は、電力市場の価格変動とアグリゲーターの制御精度に大きく依存する。

さらに言えば、今後の最大のリスクは市場の「共食い(キャニバライゼーション)」だ。今後、同じような系統用蓄電池が日本中に普及しきった未来を想像してみてほしい。みんなが一斉に安い時間に充電し、高い時間に一斉に放電するようになれば、将来的に価格差(サヤ)そのものが平準化されて縮小していく。つまり、同一エリアでの競合増がダイレクトに売上減少に直結するマクロな需給リスクを、この「25%」という数字はまだ織り込んでいない可能性が高い。

ここが、素人目には一番のブラックボックスに見えるところだ。

 


アグリゲーターって何者で、信頼できるのか

低圧の系統用蓄電池は、単体では電力市場に参加できない。需給調整市場の最低入札量は1MW(1,000kW)であり、49.5kWの単独蓄電池では、この閾値の約20分の1にしか達しない。そこでアグリゲーターと呼ばれる事業者が複数の蓄電池をまとめて「仮想の大型発電所」として市場に参加させる。

このアグリゲーターに対して、蓄電池のオーナーは運用を委託する形になる。アグリゲーターの報酬は通常、市場からの売電収益の一定割合(手数料率)として差し引かれ、手数料率は一般的に15〜35%の範囲で設定されているらしい。この手数料の差が収益を大きく左右する。

さらに2026年度の需給調整市場では一部商品の上限価格が引き下げられるなど見直しが進んでおり、手数料率の1〜2%の差がより大きく響くようになったという事情もある。市場の「天井」が下がったタイミングで、アグリゲーターの手数料が高ければ手取りは一気に減る計算だ。

つまり「アグリゲーターの実績と手数料体系が分からなければ、利回りの計算が成り立たない」という構造になっている。単体案件の見かけ利回りだけで判断し、束ねた後の運用費を見ていない、アグリゲーター手数料や精算ロスを粗く置いている、電池劣化を軽く見て交換時期を後ろに寄せすぎているというのが、専門家が警告する典型的なミスだ。

「利回り25%です」と言われても、それは誰がどの条件で運用した場合の数字なのか——そこが見えないと判断のしようがない。

 


蓄電池そのものの性能とコストも見えにくい

もう一つのブラックボックスが蓄電池本体だ。

蓄電池には「充放電サイクル数」という寿命の指標がある。何回充放電を繰り返せるかで、事業期間中にどれだけ稼げるかが変わる。毎日1サイクル使えば年間365サイクル、10年で3,650サイクルになる。蓄電池メーカーが保証するサイクル数と、実際の使用条件下での劣化曲線が一致するかどうかは、運用データが蓄積されなければ分からない。

今回の茨城の案件に採用されているSigenergyというメーカーは、蓄電池では実績があるものの、系統用途での国内運用データはまだ限られている。部材の詳細な仕様も公開情報からは読み取りにくい部分がある。

現在、産業用・系統用蓄電池の平均的な機器・工事費の水準から逆算すると、今回の156kWh規模のシステムであれば、純粋な部材や基礎工事の原価はおおよそ1,000万円強と推測してみる。税別1,930万円という販売価格との差分(約900万円前後)が、販売会社の粗利や土地仕入れ、諸経費に相当する計算だ。

見方を変えれば、これは悪い話ではない。販売会社がきちんと利益を得られる価格設定であるということは、その事業者が長期にわたってサポートやO&Mを継続できる体力があることを意味する。

買う側も工事代金を抑えすぎた”捨て値”の業者に頼む必要がない。販売する側にも買う側にも成立する価格帯であるなら、それは双方にとってのwin-winであり、ある意味での安心感につながる。問題は価格そのものよりも、その価格に見合った「中身」——蓄電池の性能・保証・運用体制——がきちんと担保されているかどうかだ。

 


それでも思い出すのは、太陽光FITの最初期の話

ここまで書くと、「じゃあやめておけということか」という結論に向かいそうだが、そう単純でもない。

太陽光発電のFITが始まった2012年ごろ、右も左も分からない状態で参入した人たちが実際にいた。「過積載って何?」「パワコン容量って?」「利回りのシミュレーションを自分で計算しろって無茶言うな」——そんな時代よりもさらに前、本当に何も情報がない黎明期に「分からないから様子見」を選んだ人と、情報が少ない中でも動いた人との間で、その後の結果に大きな差が出た。

低圧系統用蓄電池の投資計画は、かつての太陽光発電におけるFIT黎明期の熱を彷彿とさせるのではないだろうか。

黎明期には常に「情報が足りない」「実績がない」という状況がつきまとう。それでも早期参入者が高いリターンを得られた理由は、制度上の優遇と市場の未成熟さが組み合わさって、競合が少ない時期に高い単価(サヤ)を享受できたからだ。

今回の低圧系統蓄電池も同じ構造がある可能性はある。アグリゲーター事業者の経営安定性・実績の見極めが重要になっていると言われる一方で、今まさに実績のある事業者が少ないという矛盾がある。先に動いた人が先行者として、市場が共食いを始める前の「高い利回り」を一時的に享受できる可能性もある。

 


結局のところ、今は「判断できるかどうか」を問われている段階

FIT太陽光が利回り10%を割り込み、手堅い安定商品・節税っぽい商品になっていったように、低圧系統蓄電池も運用データが蓄積され、アグリゲーターの実績が可視化され、市場単価の相場感が固まってくれば、利回りは自然と圧縮されていくだろう。その過程で「安心して買える投資商品」になっていく。

今の段階で問われているのは、「ブラックボックスの中身を自分で評価できるか」だ。蓄電池メーカーの仕様書を読めるか、アグリゲーターの契約条件を精査できるか、電力市場のシミュレーションを自分で検証できるか。「2026年度から解禁だから伸びるはず」で投資判断を急ぐのではなく、数字の前提を自分で置けるかどうかが、今の段階での参入の分かれ目になる。

「設備と立地とシミュレーションを自分で計算しろ」——もしそう言われたなら、「分からんし!」と答えるのではなく、分かるようになってから動くか、分かる人と一緒に動くか、という選択になる。太陽光FITの最初期に儲けた人たちも、全員が「よく分からないまま乗った」わけではなく、少ない情報の中でも自分なりに計算した人たちだったはずだ。

低圧系統蓄電池の分譲は、始まったばかりだ。面白い時代に差し掛かっているのは確かだと思う。


【主な参考・出典】
・LehmanSoft Japan「低圧系統用蓄電池とは——2026年4月解禁の制度・収益モデル・参入手順を実務者向けに解説」(2026年5月)
・蓄電池総研「系統用蓄電池のアグリゲーター選び方2026|手数料・対応市場・契約条件を比較」(2026年6月)
・エネがえる「低圧系統用蓄電池事業とは?2026年度の需給調整市場解禁で変わること、収益モデル、開発リスク」(2026年3月)
・環境エネルギー情報局「2026年電力変革の勝機!低圧系統用蓄電池が切り拓く、新たな投資と高利回り投資」
・系統用蓄電池.com「系統用蓄電池は本当に儲かる?利回りと収益構造を徹底解説」(2025年12月)
・環境エネルギー情報局「系統用蓄電池ビジネスの未来はあるのか?コストと政策から読み解く展望」
・資源エネルギー庁「需給調整市場について(第109回 制度設計専門会合)」(2025年)

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