斜面の太陽光発電は本当に危険?「負動産」再生という現実的な解決策を考える
太陽光発電というと、最近は「山の斜面が削られて危険だ」「土砂崩れの危険がある」といったネガティブなニュースが目立ちます。確かに、広大な山林を無計画に開発するメガソーラーには、安全性や環境保全の観点から問題があるのは事実です。
私も以前は「斜面はヤバい」と強く感じていましたが、先日、ある光景を見て考えを改めました。
幹線道路沿いの、いかにも「負動産」といった様相の小さな傾斜地に、太陽光発電所が建っていたのです。長年、箸にも棒にもかからず、ただ固定資産税だけを払い続けてきたような土地が、突如として価値を生み出している、その現実を見て、思わぬ結論に達しました。
太陽光発電は、すべての斜面で問題なのではなく、「活用困難な負動産」に対する最も現実的で、かつ賢い解決策「だった」のかもしれない、と。
1. 誰も触れたがらなかった「負動産の現実」
ここでいう「負動産」とは、具体的にどんな土地でしょうか。それは、次のような特徴を持つ、地主にとって純粋なマイナス資産です。
負動産の具体的な特徴
- 小さな傾斜地: 住宅を建てるには適さない。農地にするには非効率すぎる。
- アクセスが悪い: 開発業者も二の足を踏む立地。
- 収益ゼロ: 何の収益も生み出さず、資産価値もほぼない。
- 維持コスト: 周囲に迷惑をかけないよう、地主が毎年、草刈りだけはしなくてはならないという義務感とコストだけが発生する。
私が目にした土地もまさにこれでした。「幹線道路沿いなのに、この傾斜で、形も悪く、微妙な狭さ、正に負不動産」と思っていた場所です。幹線道路沿いであるがゆえに固定資産税は安くなく、地主にとっては「税金と草刈り代だけが出ていく、厄介な負債」の可能性が高そうでした。
2. 太陽光発電がもたらす「負の連鎖」の断ち切り方
この活用困難な土地に、太陽光発電所ができたことで、状況は劇的に変わります。
メリット①:地主に安定した収益が発生
土地は貸し出され、地主は安定した賃料収入を得ることができます。これまでマイナスだったキャッシュフローがプラスに転じます。
メリット②:地方自治体への税収貢献
かつての地目次第では、雑種地に転用することで、土地の固定資産税も向上するでしょうし、償却資産税としても自治体に税収がもたらされます。
メリット③:維持管理の負担解消
事業者が土地の管理を行うため、地主は長年の重荷だった草刈りや境界の整備から解放されます。周囲の住民にとっても、荒れた土地が放置される心配がなくなります。
つまり、太陽光発電は、「誰にも使えず、収益も出ず、維持費だけがかかる」という負の連鎖を、収益源へと転換する最も現実的かつ効率的な手段でした。
3. 「安全性の問題」と「小規模開発」の線引き
もちろん、すべての斜面開発を肯定するわけではありません。
問題視される「大規模開発」
山林や大規模な斜面を大規模に削り、森林機能や治水機能を失わせるようなメガソーラーは、土砂災害のリスクを高め、生態系への影響も大きいため、今後は厳しく規制されるでしょう。
肯定されるべき「小規模・非効率地の活用」
一方で、私が目撃したような「住宅適地でも農地適地でもない、小規模な傾斜地」への適切な施工・設置は、地域に以下の貢献をもたらします。
- 国土の有効活用: 誰も使えない非効率な土地を再生できます。
- 地域経済への貢献: 固定資産税や事業税を通じて、地方の財源を確保できます。
- 再生可能エネルギーの確保: エネルギー問題解決の一端を担えます。
重要なのは、「斜面」を一律に悪者にするのではなく、「適切な施工基準」と「開発規模」で線引きをすることです。住宅や農地に適さない土地を効率的に活用できるのは、現時点では太陽光発電が最も現実的な選択肢と言えるでしょう。
まとめ:負動産問題への「苦肉の策」が地域を救っていた
生まれてこの方、何ら価値もなさそうだと思っていた土地が、突如として収益を生み出し、地主を固定資産税の支払いと草刈り地獄から解放する。この再生の事例は、日本の抱える「負動産の増加」という深刻な問題に対し、太陽光発電が持つ潜在的な解決力を示して「いた」のかもしれません。
山の斜面はヤバいと散々言ってきましたが、適切な規模と基準次第では、それは負動産問題に対して最も現実的な「苦肉の策」であり、地域を蘇らせる唯一の道「だった」のかもしれません。
都会の人々は整備された市街地しか知らないのかもしれませんが、田舎には結構な頻度でどうにもならない土地が点在しています。今更、太陽光発電所も導入できないでしょうし、これらの負動産は今後どうなっていくのでしょうか? 所有者不明の土地が溢れかえらないと気づかないのでしょうか。
■ 参考資料・出典
- 経済産業省:再生可能エネルギー導入に関する規制・指針
- 国土交通省:遊休地の有効活用に関するガイドライン
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