「メガソーラー」はなぜ“嫌われ者”になったのか?赤澤経産相のペロブスカイト支援に欠けている「敗戦の総括」と「戦略なきバラマキ」への疑念
2025年12月23日、政府がとりまとめた「メガソーラー対策パッケージ」。 赤澤亮正経済産業相は、不適切事案への法的規制を強化する一方で、次世代型太陽電池「ペロブスカイト」などを重点支援する方針を打ち出しました。
しかし、この方針には納税者が納得できる「肝心な説明」が完全に抜け落ちています。それは、かつて世界シェアを独占した日本の太陽光産業がなぜ崩壊したのかという「敗戦の総括」と、新技術に投じる血税が再び外国勢に飲み込まれないための「戦い方の表明」です。
1. かつての「世界シェア1位」日本メーカーの栄光と没落
今でこそ「環境破壊の元凶」のように叩かれる太陽光パネルですが、かつて日本は間違いなくこの分野の世界王者でした。
2000年代半ばまで、シャープ、京セラ、三洋電機といった日本勢が世界シェアの半分近くを占めていました。しかし、2010年代に突入すると、中国勢の圧倒的な物量作戦の前に、日本メーカーは次々と撤退・縮小を余儀なくされました。
【グラフ:日本の太陽光パネルメーカー 世界シェアの推移】
技術で勝ってもビジネス(コスト・規模)で完敗した歴史がある。
2. 「鎖国」か「開放」か? 政府が表明しない“不気味な空白”
今回のパッケージで最も不透明なのは、ペロブスカイトへの「重点支援」の定義です。
もし政府が、「補助金は国内製造品に限定し、外国産は一切排除する」という、かつての日本が成長を遂げた際のような“鎖国的な産業保護政策”を断行する覚悟があるのなら、それは一つの戦略でしょう。
しかし、現在聞こえてくるのは「新しい技術だから支援する」という景気の良い言葉だけです。
- 戦略なき資金投入の危うさ: 「どう守るか」「どう勝つか」の方針を表明しないまま金を出すのは、単なる無策です。
- 外国勢の影: 真偽不明ながら、すでに中国企業などがペロブスカイトの先行量産を開始したという情報も入っています。戦い方を決めずにリングに上がれば、またしても「日本の税金で技術を育て、収益は外国に持っていかれる」という最悪のシナリオを繰り返すことになります。
3. 「半導体の二の舞」は許されない:求められるのは“敗戦の弁”
政府はこれまでも、失敗した国内産業の基盤を守るという名目で、半導体や液晶事業に延々と巨額の資金を投入し続けてきました。
太陽光産業においても、以下の点を公表するのが先ではないでしょうか。
- 失敗の原因分析: シリコン型パネルでなぜ負けたのか? 制度設計のミスだったのか、経営判断のミスだったのか。
- 戦い方の明示: 外国勢とコスト競争をするのか、それとも国内市場を閉鎖的に守り抜くのか、その「旗印」を明確にすること。
- 出口戦略: 失敗しても「国内基盤だから」とゾンビのように資金を投入し続けるつもりなのか。
「問題は、方針を表明していない段階で『金を出す』とだけ言っていること」にあります。これでは、国民の理解は得られません。
4. メガソーラーが「地域の敵」に変貌した真犯人
技術の凋落以上に深刻なのが、太陽光発電そのものが「嫌われ者」になってしまった現状です。
かつて誇るべき産業だった太陽光が、今や「環境破壊」「土砂崩れのリスク」「外資による土地買収」の象徴となってしまいました。このブランド失墜の原因を追求せず、技術をペロブスカイトに変えたところで、運営側や支援側の姿勢が変わらなければ、再び地域との対立を招くだけです。
まとめ:誠実な「戦略」なしに血税は投じるべきではない
赤澤経産相の言う「重点的な支援」が、日本の産業基盤を真に再構築するものになるのか。それとも、またしても「失敗を認めないための延命措置」に終わるのか。
政府に必要なのは、新しい箱物への投資ではありません。「過去の敗北をどう総括し、今回はどうやって勝つ(守る)のか」という明確な国家戦略の表明です。
それがないままの支援は、単なる「税金の垂れ流し」と言わざるを得ません。
- « 前の記事へ





コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。