【知られざる光害の現実】渡り鳥を苦しめる都会のまぶしすぎる夜と、私たちが見て見ぬふりしている問題
都会の夜空は明るすぎる。
夜でも昼のように輝く看板、ビルを覆うLEDライト、24時間営業の施設…。
その光の洪水が、どれほど多くの生き物を苦しめているかを、私たちはどこかで分かっていながら、日常の便利さに流されてしまっている。
近年、自然環境の問題として「メガソーラー」や「風力発電」の議論が激しくなる一方で、
都会そのものが生み出している“光害”による生き物への影響 は、驚くほど語られない。
■ 光害(こうがい)とは?
光害とは、人工照明によって自然の明るさが過剰にかき消され、生態系や人間の生活に悪影響を及ぼす現象のこと。
特に影響を受けるのが、夜間を活動時間としている生き物たち だ。
- 渡り鳥
- 昆虫
- コウモリ
- 夜行性の哺乳類
彼らは「自然の暗さ」を頼りに生活している。
しかし都市の強烈な光は、彼らの生存戦略を根本から崩してしまう。
■ 都会の強烈な照明が、渡り鳥の命を奪う仕組み
渡り鳥は、星の配置や月明かりをナビゲーションとして飛ぶ。
だが、都市部の強い光に引き寄せられてしまうため、本来のルートから外れて孤立したビル街へ迷い込んでしまう。
そしてその結果—
● 高層ビルのガラスに激突して死亡
● 深夜の光に引き寄せられ疲弊し、翌日の移動が困難になる
● 本来のルートに戻れず衰弱死
これらは世界中で報告されており、実際には「光害が引き起こす最大の野生生物被害」とさえ言われている。
■ 不思議な沈黙:都会の問題は語られないのに
一方で、SNSでは次のような光景がよく見られる。
- メガソーラーが景観を壊す
- 風力発電が鳥を殺している
- 山が削られて環境破壊だ
もちろん、これらは議論すべき重要なテーマだ。
だが不思議なのは、
都会の光が生き物に与えている“もっと身近な問題”については、ほとんど語られないことだ。
自分たちの生活圏で起きている光害はスルーし、
遠く離れた地域の開発だけを徹底的に叩く——
そんな構図が、少し滑稽に見えることもある。
「都会の生活そのものが多くの野生生物を苦しめている」という事実は、誰もがわかっているはずなのに。
■ 都市の光害対策は、実は現実的で効果が高い
光害は「対策をすればすぐに効果が出る」という珍しい環境問題だ。
● 過剰なライトアップの削減
● 夜間の看板照明の制限
● 照明の角度を下向きに調整
● 省エネ型の低色温度LEDへ切り替え
● ガラス張りビルの明かりを減らす
● 夜間の鳥衝突対策フィルムを導入
これらは、自然環境だけでなく電気代削減やCO₂削減にも直結するため、経済的メリットも大きい。
■ 都会に住む私たちが「本当に向き合うべき問題」
メガソーラーや風力発電を一方的に批判する前に、まずは自分たちが住む都市の光害問題を振り返る必要がある。
- 必要以上に明るい街灯
- 眠らない商業地区
- 夜中でも消えないLED看板
- 企業ビルの無駄なライトアップ
これらは、毎日使う道路、駅、商業施設、住宅地など、すぐ目の前で起きている環境負荷だ。
自分の生活にはメリットがあるから黙り、
自分に関係のない遠い地域の問題だけ声高に批判する。
その態度のままでは、環境問題の本質を語っているとは言えない。
■ おわりに:光害は“今すぐ改善できる生態系保全”
環境問題というと「規模が大きすぎて自分には何もできない」と思いがちだが、光害は違う。
- 店舗の照明を少し暗くする
- 家庭で過剰な外灯を使わない
- 夜間ライトアップの是非を地域で議論する
- 行政が照明ガイドラインを設ける
こうした取り組みだけで、都市に迷い込む渡り鳥や夜行性動物の負担は大きく減らせる。
都会が自然に与える影響を正面から見つめ直すこと——。
そこから初めて、本当の意味で「環境を語る資格」を持つのではないだろうか。
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