【メガソーラーの裏側】山林を切り開く負動産問題!土地の所有者責任と「国庫帰属制度」の冷酷な現実
■ はじめに:なぜ山間部にメガソーラーが増えたのか?
里山や山間部の斜面を大規模に切り開いたメガソーラー(発電容量が1,000kW(1MW)以上の大規模な太陽光発電所)の建設が社会問題化しています。景観破壊や土砂災害リスクが批判の的となる一方で、なぜ、所有者は次々と大切な山林を事業者へ売却するのでしょうか?
その背景には、「負動産(ふどうさん)問題」という、日本が抱える根深く深刻な国土の問題が横たわっています。
本記事では、山林や田畑といった地方の土地が、所有者にとって「資産」から「負債」へと変貌するメカニズムを解説し、国が創設した「相続土地国庫帰属制度」の課題、そして現在議論されている「外国人による土地取得制限問題」との関連性について、具体的なデータと法的な側面から徹底的に分析します。
1. 山林が「負動産」化するメカニズム:高額な管理費用とリスク
山林や農地が負動産(維持コストやリスクが収益を上回る資産)になる最大の要因は、管理にかかる費用と所有者責任の重さにあります。
A. 高額な維持管理コストと林業の衰退
林野庁のデータによれば、日本の山林の多くは適切な手入れがされていません。
- 伐採・間伐費用: 山林を適切に管理し、健全な状態を保つための伐採や間伐作業の費用は高額です。特に地方の個人所有者にとって、作業道のない奥山の管理コストは、木材価格の下落と相まって、採算が取れない状況が続いています。(出典:林野庁「林業・木材産業をめぐる情勢」)
- 固定資産税: わずかであっても、毎年固定資産税の支払い義務が発生します。
- 世代交代による所有者不明地化: 山林や田畑は、相続人が都市部に住み、所有権移転登記をせずに放置することで、所有者不明土地となり、さらに管理が困難になります。(出典:国土交通省「土地所有のあり方に関する検討会」)
B. 土砂災害リスクと所有者責任の増大
管理放棄された山林は、豪雨による土砂災害のリスクが格段に高まります。
- 所有者責任の法的側面: 民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)により、管理の不備によって土砂崩れが発生し、他者の生命や財産に被害が出た場合、最終的な責任は土地の所有者が負うことになります。
- 個人で負えるリスクではない: 損害賠償額は甚大になる可能性があり、これは個人が負うにはあまりにも重いリスクです。このリスクを回避するために、所有者は二束三文であっても手放したいと考えるのです。
2. 国の対応:冷酷な「相続土地国庫帰属制度」の課題
このような深刻な負動産問題を解決するため、国は2023年4月に「相続土地国庫帰属制度」を施行しました。しかし、この制度は本当に困っている国民を救済するものではないと批判されています。
A. 制度の概要と「殿様制度」たる所以
この制度は、相続した不要な土地を国に引き取ってもらうことができるというものですが、国側が一方的に土地を選ぶという極めて厳しい要件が設けられています。
- 審査と手数料: 国庫への帰属には、審査手数料のほかに、土地の性質に応じた10年分の管理費相当額の負担金(例:山林であれば数万~数十万円/10a)を納付する必要があります。(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)
- 厳しい却下要件(都合の良い土地だけ):
- 崖地や傾斜地、危険な土地: 却下されます。
- 土壌汚染や埋設物がある土地: 却下されます。
- 担保権などが設定されている土地: 却下されます。
つまり、土砂災害のリスクが高く、管理費が高額で、本当に手放したい「純粋な負動産」は国が引き取りを拒否する構造になっているのです。このため、「国は安全で管理しやすい土地だけをお金をもらって引き取ってやる」という殿様制度だと揶揄されています。
B. メガソーラー事業者への感謝
このような状況下では、二束三文であっても土地を買い取ってくれるメガソーラー事業者は、土地の所有者にとっては「負の遺産を処分してくれた救世主」と映ってしまうのが現実です。
3. 地方の負動産から見た外国人土地取得制限問題
現在、安全保障の観点から、外国人による土地取得制限の議論が高まっていますが、その多くは「自衛隊基地周辺」や「都市部の優良不動産」に集中しがちです。
A. 議論されない「負動産」の現実
日本の国土の真の問題点は、都市部と地方の二極化です。
- 都会の優良不動産: 外国資本が積極的に取得しようとしており、規制議論の対象となります。
- 地方の山林や農地: 外国資本どころか、日本国民の誰もが欲しがらない負動産が大量に存在し、国土の荒廃につながっています。
B. 日本国民が認識すべき問題点
政府や国民が、外国人による土地取得の規制議論に熱心になるのと同時に、日本国民自身が目を背けてきた地方の負動産問題に真剣に向き合う必要があります。
- 国土の荒廃: 管理放棄された負動産の増加は、国土の荒廃と災害リスクの増大に直結します。
- 外国人による取得の「メリット」: 誰も買わない負動産を外国資本が取得し、開発や利用を行うことは、固定資産税の徴収や地域の経済活動の維持という側面においては、必ずしもデメリットだけではないことが、より問題を難解にしている。 文句があるなら土地を買ってくれ! 口を出すなら金も出せと言われる所以である。
■ まとめ:負動産を巡る国土の危機
メガソーラー建設の背景にあるのは、個人の努力ではどうにもならない山林管理の高コストと、重すぎる所有者責任、そして国の救済制度の不備です。
日本国民は、都市部の優良不動産だけでなく、誰も欲しがらない地方の負動産にこそ、真の国土問題の根源があることを認識し、国土の維持という課題に目を背けるべきではありません。
外国人土地取得問題を解決するつもりがあるのであれば、相続土地国庫帰属制度を最優先で改正し、負動産で困っている国民と助けるべきではないでしょうか。
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