これまでの記事では、生成AIに正確に意図を伝えるために「目的・条件・文脈」、そして「5W1H」の明示が大切だというお話をしてきました。
これらを意識するだけで、出力の質は大きく向上します。
しかし、実際に応用してみると、それでも答えが浅かったり、ピントがずれたりすることがあると感じる方もいるかもしれません。
そのようなときに次に考えるべきなのが、「質問の分け方=プロンプトの構造化」です。
今回は、「プロンプトを分割・段階化することで、生成AIの精度と深さをさらに引き出す方法」をご紹介します。
この工夫ひとつで、AIからの出力は見違えるように改善されるはずです。
■ なぜ、分けて聞いた方がうまくいくのか?
生成AIは、単純な問いには強い一方で、複数の要素が混ざった複雑な問いには弱くなる傾向があります。
たとえば、
「生成AIの未来について、応用分野や課題も含めて詳しく教えて」
というように、1文で多くのことを聞こうとすると、AIは答えるポイントを迷い、浅く広い出力になりがちです。
これは、AIが「どこに重点を置くべきか」を自分で判断する能力が限定的であるためです。
そこで有効なのが、「プロンプトを分けて段階的に聞く」というアプローチです。
■ これは“構造”の工夫。中身の精度を高める土台の上に。
ただし、ここで大切なのは、プロンプトを分ければ万能というわけではないことです。
前提として、「目的は何か」「どんな状況で使いたいのか」「何を、どのくらい、どんな形で知りたいのか」を明確にしておく必要があります。
つまり、これまでお話ししてきた「目的・条件・文脈」と「5W1H」が基礎にあるということです。
分割プロンプトとは、それらが整った状態で、「どう質問を構造的に設計するか」という次のステップになります。
■ 分割プロンプトの4つのパターン
以下に、分割プロンプトの代表的なパターンをご紹介します。
どれも実務や調査、学習などで役立つ構造です。
【1】要素分解型
複雑なテーマを、「背景」「特徴」「課題」「展望」などの要素に分けて聞く手法です。
例:
(目的)新人研修向けの資料を作るために、
(条件)生成AIの基礎から応用までを網羅的に理解したいです。
(プロンプト構造)
まず、生成AIの概要を200文字で説明してください
次に、主な応用分野を3つ挙げてください
続いて、各分野における課題を簡潔に述べてください
最後に、今後の展望について、3年後を想定して予測してください

【2】時系列ステップ型
「過去 → 現在 → 未来」のように、時間の流れに沿って質問を構造化します。
例:
(目的)業界プレゼン資料に使う分析レポートを作成したい
スマートフォンが普及するまでの歴史的背景を説明してください
現在の利用状況と課題を挙げてください
5年後に予測される主な変化について述べてください
【3】比較・対比の分離型
一度に比較するのではなく、それぞれを分けて聞き、最後に比較する方法です。
例:
(文脈)社内で導入するLLMを比較検討したい
ChatGPTの特徴を3つ挙げてください
Geminiの特徴を3つ挙げてください
それらを性能・応答品質・拡張性の3観点で比較してください
【4】前提から導く型(因果・推論型)
「定義→適用→結果」や「仮説→分析→予測」など、思考のステップごとに質問を組む方法です。
例:
(目的)ゼロトラストセキュリティの導入に向けて情報整理をしたい
ゼロトラストセキュリティの定義を簡単に説明してください
それを中小企業に適用した場合のメリットを3つ挙げてください
実装時に予想される課題とその対応策を教えてください
■ Before / After:分けるだけで精度は変わる
【Before(悪い例)】
生成AIの応用分野と課題、そして今後の展望について教えてください
→ 曖昧で出力が散漫になりやすく、精度・深度ともに低くなる傾向
【After(改善例)】
まず、生成AIが活用されている代表的な分野を3つ挙げてください
次に、それぞれの分野における技術的・社会的課題を簡潔に述べてください
最後に、今後3年での進展や新たな応用の可能性について予測してください
→ 出力が整理され、各ポイントが深堀りされる
→ そのままプレゼン資料や記事に使える品質になる
■ まとめ:プロンプトは“質問”ではなく“設計図”
プロンプトを書くとき、多くの人が「何を聞くか」に注目しますが、
「どう聞くか」──つまり、構造や順番を意識することで、出力の質は劇的に変わります。
そして、そのためにはまず、「目的・条件・文脈」や「5W1H」で内容を明確にし、
次に「質問をどう段階的に組み立てるか」という発想が求められます。
プロンプトは単なる問いではなく、「AIに考えさせるための設計図」です。
この感覚を持つだけで、生成AIとの対話はより実践的で、強力なツールになります。
次回は、生成AIから得られた出力をどのように検証し、どこまで信頼すべきか、
つまり「人間側のチェック力」について掘り下げていく予定です。
生成AIとの上手な付き合い方を、引き続き一緒に探っていければと思います。
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