なぜテレビはクマを生中継するのか?
「数字」と「信じたいもの」が交差するメディア構造を深掘り
クマ問題の報道が加熱しています。
2025年11月15日、視聴者の間では——
「情報番組『ニュースジグザグ』(宮城県仙台市内のクマ捕獲現場)が“生中継形式”で放送された」
——という話題が広がり、大きな反響を呼びました。
(私自身もリアルタイムで視聴しており、現場の緊迫感がそのまま画面に映し出されていました。)
このように、複数の番組がクマ問題を大きく扱った背景には「ニュース価値」だけではなく、テレビ局の編成判断としての戦略があると考えられます。
■ 11月15日のテレビ報道
● 情報番組「ニュースジグザグ」
- 宮城県仙台市青葉区郷六のクマ捕獲現場が“生中継”されたと視聴者の間で話題に。
こうした番組が同日に集中したことは、テレビ局がクマ問題を “高視聴率が期待できる話題” として扱っている傾向を裏付ける材料でもあります。
■ メディア構造分析:テレビは「人が見たいもの」を流しているだけ
テレビ局の最大の目的は 視聴率 です。
そして視聴率を作るのは、人間の心理。
- 人は自分が見たいものを見る
- 信じたいものを信じる
- 叩きたい対象を叩く
この“心理のアルゴリズム”に、クマ問題は非常に相性が良いのです。
- 恐怖・危機は人を画面に釘付けにする
- 対立構造が議論を生む
- SNSで拡散されやすい
- 生中継は臨場感が段違い
テレビ局はこれらを理解しているため、クマ問題を「数字が取れるネタ」として扱わざるを得ない構造にあります。
■ 「絶滅させろ vs 〇すな」 中継により双方の主張が役所に向かうことは当然予測しているはず
● 駆除・捕獲を支持する立場
- 人命・財産被害を防ぎたいという切迫感
- 農作物被害、山村住民の安全確保を重視
- 過去の重大事故に基づく恐怖や不安
● 駆除反対・クマ保護の立場
- クマは生きる権利があるという自然への尊重
- 森林破壊や自然環境の変化が出没の根本原因という指摘
- 駆除が“根本解決”にならないという懸念
両者とも主張を役所(自治体・県・国)に向けます。
役所は目撃情報や申請、駆除の判断を握っているため、クマ対策の場として非常に重要なターゲットです。
■ テレビ局が“生中継”を選ぶ理由は戦略的
テレビが“中継”を選ぶ理由は単なる報道ではなく、戦略的判断が背景にあると考えられます。
- 速報性と危機感を同時に伝える
視聴者は“今まさに起きている危機”を見たい。生中継+ニュース速報はこのニーズを満たします。 - SNSとの相性が良い
中継映像はSNSで拡散しやすく、テレビ→ネットの波及効果を狙った構造。 - 報道の対立構造を演出できる
「クマ賛成 vs 反対」の議論を画面で可視化し、視聴者を引きつける。 - “防災報道”としての正当性
被害急増は公共の安全問題でもあるため、「命の危機を伝える報道」として中継の大義名分があります。 - 制作コストが見合う
すでに取材班を張り込ませていれば、中継をするコストは大きいが回収可能な投資と判断されやすい。
■ メガソーラー問題 → クマ問題へと話題が移ったのはなぜか?
ここ数ヶ月、全国的に「メガソーラー問題」が連日報じられていました。
しかし——
クマ問題が発生した途端、テレビの報道量は一気に“クマ一色”になりました。
これは決して偶然ではありません。
クマ問題は
「怖い・危険・今そこにある危機」
という“わかりやすく強い刺激”を持つ映像。
どちらがテレビで流しやすいか?
どちらがSNSで拡散しやすいか?
どちらが視聴率を取りやすいか?
——結果は言うまでもありません。
つまり、
話題がメガソーラーからクマへ急速に移ったのではなく、
視聴者が“より強い刺激”の方向へ自然に流れた
ともいえます。
テレビはただその流れに合わせただけです。
■ 「人は信じたいものを信じ、叩きたいものを叩く」
メディアと視聴者の心理
テレビの中継報道では、視聴者の 感情的態度 が重要な役割を果たします。
- クマを恐れる人は「中継映像」で共感と恐怖を確認。
- クマを守りたい人は「かわいそう」「生きる権利がある」という視点を強める材料に。
- 両者とも、メディアを通じて役所や社会に自分の主張を可視化させたい。
その意味で、テレビ局は視聴者が「信じたいもの」「叩きたいもの」を映像に変換して提示し、議論を拡散させるメディアとして非常に有効に機能しています。
■ 結論:テレビが中継を選ぶのは視聴率+社会構造を見抜いたから
- クマ問題は「数字が取れる」絶好のネタ。
- 人は「信じたいもの」「叩きたいもの」に強く反応する。
- 生中継はテレビ局にとって効率的なコンテンツであり、視聴者の感情を刺激し議論を可視化できる。
だからこそ、メディアの役割を 視聴者自身も批判的に見る必要があります。クマ問題の報道をただ消費するのではなく、批判的に、そして責任を持って受け止めることが、社会として成熟するための必須条件です。
- « 前の記事へ






コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。